売り手市場の新卒採用に切り込む上で、使える「英語」

新卒の入社理由は色々ありますが、福利厚生・勤務地などの恒久的な要因がある一方、時代の変化に応じて変わっていく要因もあります。「事業内容への興味」や「成長できる環境」などが年々増加傾向にあります。その反面、「社風」や「社員の魅力」などの要素は年々減少傾向にあります。

若手人材の英語教育で最近感じるのは、個々の関心事が多様化し、かつ先鋭化していることです。これは「組織としての空気感」や「一個人の魅力」といった、ふわっとしたもの、属人的な、つまり他の人ががんばっても獲得できない類のものよりも、もっと具体的にかつ個人的努力で探求できるものに関心がシフトしていると受け取ることもできるのではないでしょうか。そう考えれば、企業に対しても、より具体的な「事業内容」に関心はシフトし、その中で挑戦・成長できる環境かどうかを若手人材は模索しているのではないかと思われます。

 

別の言い方をすれば、小手先の雰囲気作りやプレゼンではもうごまかしきれない時代になってきたということ。新卒たちも、企業の事業内容を精査しつつ、そこにどんな「個」としての成長ポテンシャルがあるかを見極めようとしています。

 

こうしたハイポテンシャル人材をつなぎとめるためには、英語研修をどのように「”一味違うわが社”アピール」に取り込んでいけばいいのでしょうか?

 

目次

 

1.「充実した教育ラインナップ」ではもはや弱い

とある企業では充実した研修ラインナップを誇っていました。しかし皮肉なことに、そうした研修を率先して受けるような若手ほど辞めていくというジレンマに陥っていました。今の人たちは、「実践」に飢えています。知識を育む研修の場と実践の場である現場がつながっていないと、彼らは外の世界に活躍の場を求めます。こうした頭脳流出を防ぐため、ハイポテンシャル人材つなぎ止めにおいて有力だと思われる研修には、必ず何か受講者の現業につながる要素を盛り込むようにします。

 

一例としては、医療器械業界であれば、当該領域の最先端事情を探るために国際学会に参加させ、情報収集をはじめとする、様々なミッションを与えることです。しかもそれは会社から与えるよりも、受講者自身に国際学科参加を通して何をしたいか、何を得たいかを考えさせ、出張企画書を提出させるように導くことも有効でしょう。ハイポテンシャル人材は、こういうときに独自性や積極性を発揮するものだからです。あるいはすべての研修において、「研修受講主意書」のような書式で、受講者自らにその受講目的や、キャリアへどうつなげていくかを考えてもらうのも一考です。

 

2.TOEICなど数値化できるものへの過信を改める

TOEICは「英語学習促進剤」としての機能しかありません。795点が敗者で800点が勝者というような狭隘かつ無意味な競争は昨今は全く不要と言ってよいでしょう。便宜上800点という目標点があったとしても、「700点ではあるが、英語の傾聴のコツはわかったし、英文書の読み飛ばし方も心得た」という収獲があればもう十分。あとは不足分はAIツールを駆使しながら補っていけばよいのです。テストそのものには罪はありません。要は利用する側が賢く使えばTOEICは今でも利用価値があると思います。「TOEICを賢く使う」とはビジネス文脈で言うと、「不必要にテストに熱を上げさせないこと」「スコア差に不必要に一喜一憂させないこと」、「人事考課においては、あくまでも運用面での参考データとして使い、絶対的あるいは硬直的なスコア活用は回避すること」ということです。

 

ちなみに、こうしたTOEICの実用性に意識を向かわせるためには、発信系要素を絡ませるのがコツです。「パート3の会話問題で高得点を取得するために、自らも英語を発し、実際に英会話の体験値を増やそう」という主旨を絡ませれば、「ひたすら模試を解く」という受験の延長のような無味乾燥な「試験対策」から受講者は解放されます。

 

3.「対人コミュニケーション」に誘導する研修を

ネットや、AIツールで即席感覚で知識が手に入る時代です。若手は自分達に足りないのは「生身の対人コミュニケーション」であることを十分自覚しています。英語という方便を利用して、時に日本語も交えながら、コミュニケーションの場数を増やす。この効果は我々研修施策側の想像以上に大きいです。若手と言えども成人に今更ながら「日本語コミュニケーションは大切です」はパンチが弱すぎます。ここに英語を絡ませて、彼らの知的好奇心と、「高学歴でも英語が話せない屈折した劣等感」を刺激しつつ、日英、言語を問わず、人とのコミュニケーションに果敢に挑戦し、ビジネスパーソンとしてだけでなく人間として、あるいは地球人としての成長を実感させていくのも英語研修の醍醐味です。

 

4.AI活用の手加減を知る研修

わずか数秒で英訳してくれたり、校正してくれるAIは、英語学習よりも、英語運用重視する人たちにとって魅力的です。弊社ではライティングにおけるAI活用を推奨しているため、受講者のライティング生成物の質は飛躍的に改善されていきます。その一方、受講者の「真水の」英語力によっては、本人の意図するものとはかなり違う方向に英文が仕上がっていく「危険な」事例も発生します。平たく言えば、「文字数ばかり多くて、何を言いたいのかわからない英語レポート(でも文法的ミスはゼロ)」のような生成物が出来上がってしまうのです。ここで受講者は身を以て、AI丸投げのリスクを知ることになります。

【論理構築力や説得力は自分で実際に書き倒さないと身につかない】

 

5.認知世界の調整の必要性を知らしめる研修

情報は私たちの認知世界を形成する上で非常に重要な要素です。そして今の時代、この情報リソースが世代や個人でかなり多様化しています。ざっくり言えば、新聞やテレビの良くも悪くも同質化された情報に接することが多い世代と、SNSやWebなどの良くも悪くも玉石混交の情報に触れ、自分で取捨選択していく世代とでは、同じニュースの解釈がかなり違ったりします。これはどちらが正しいか優れているかということではなく、何を情報リソースにするにせよ、最終的には自分で取捨選択していく覚悟と、煽られる分断に加担しない姿勢が大切だということです。

 

このあたりの認知世界の多様性を学べるのも英語研修の隠れた利点と言えるでしょう。ディベートのように勝敗を決めるのも悪くないのですが、それ以上に、「ひとつのテーマでも多種多様な考えや、自分が思いつかない論点がある」ということを知るということに研修の醍醐味があると言えましょう。アメリカにおける保守とリベラル、宗教界におけるイスラム教とキリスト教、世界文明あるいはアジアにおける日本文明の特殊性など、世界には、認知世界の多様性を知る材料があふれています。

【世界における認知世界の多様性をまずは知ろう】

【世界的デジタル戦争から、わが国、わが会社、我自身を見つめ直す】

上記「デジタル戦争の真実」では、 これからの若い世代の「競争」「成功」「論功行賞」に対するとらえ方が旧世代のそれとは代わりつつあることを教えてくれます。たとえばスポーツの領域では誰か(欧米の支配層)が敷いたルールで勝つためにがんばり、成果が出ると、そのルールを変えられてしまうことがこれまでの日本ではよくありました。デジタル競争もこれと同じことが起こっており、そもそもこうした競争に与しない働き方も若い世代から出始めてきています。

「FLOORP(フロープ)というWEBブラウザを開発した、日本の学生コミュニティ(ABLAZE(アブレイズ)をご存じでしょうか?Floorpは日本発のブラウザとして日本の技術力を世界に示し、グローバル市場で競争力のあるブラウザを開発することを目標に掲げています。GAFAMに依存せず、広告系企業とも連携しない国産WEBブラウザーを使用するだけで、デジタル主権やプライバシーが保護されます。ユーザーの追跡をせず、ユーザーのデータも販売しないと明言するように、そのような機能自体がないことは、ソースコードが公開されていることから明らかです。潰そうにもとっかかりがなく誰か一人のリーダーに依存することなく集団の和をもって強大な勢力に対抗していく、まさにこれからの時代に求められる組織と言えます」

(デジタル戦争の真実 青林堂 29ページより引用)

こうした時代の動きは、若い世代ほど敏感にキャッチします。これからは社員を浦島太郎にさせないような配慮もポイントになってくるように思います。英語研修文脈でいえば、テストスコアや、ネイティブ英語話者を基準とした表現収集にムキになる時代は完全に終わっています。母国語ベースでの議論体力、情報収集力に裏付けされた英語力が問われる時代になりました。外国人と対等に議論できる経営者や政治家の英語動画を見ていましても、そのほとんどが話す内容に集中しているため、発音は日本人らしさが残っています。「ネイティブはこんな言い方するんですよ。知ってましたか?」という知識の暗記モードから完全に社員を解放させ、本業に全力をあげていただくべく誘導するのも、企業英語研修の大切な役目です。

 

6.属人的スキルに切り込む英語

ここで自学副教材として並行利用できる通信講座をご案内します。研修は何よりも実体験重視であるため、実体験をさせて浮上した受講者たちの疑問やコメントに講義的なアドバイスを載せるようにしています。単なる知識としてAの講義を展開するよりも、受講者から「実際にAをやってみたが、うまくいかなかった。どうすればいいか?」という質問を受けてからAについて講義する方が自分事として聞いてもらえるからです。

 

とはいえ、知識体系としてとりあえずビジネススキルを概観しておくことは、将来実践の場面に遭遇する際にも役立ちます。「いきなり英語で交渉しろと言われて頭が真っ白になった」ではなく、「いきなり英語の交渉に直面することになったが、おおよそのイメージはできている」という状況に受講者を誘導しておくことは十分可能です。それが以下に紹介する通信講座です。プレゼンテーションに関するビジネス書は割と多いのですが、問題はネゴシエーションの方です。著者である私も、製作にあたり、ネゴシエーション英語の参考書を探したのですが、ほとんど見当たらなかったため、自分自身の体験を、経験の有無にかかわらず誰でも応用できる10個のテクニックに落とし込みました。本来であればベテランの個人的体験によることが多い「属人的スキル」を可能な限り組織内で共有できる「形式知」に変えることを目指したのが、本通信講座と言えます。

 

【本ブログ著者監修のプレゼンテーションの通信講座(ガイダンス動画)】

【英語でビジネスコミュニケーション実践編:プレゼンテーション・ネゴシエーション(詳細情報)】

 

7.研修実績

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