他の研修時間増やす『タイパの良い』英語研修⁉

タイパ、すなわちタイムパフォーマンスの良い研修とはどんなものでしょうか?弊社ではタイパの良い研修には2つの視点が必要だと考えています。ちなみにタイムパフォーマンスとは、費やした時間に対する効果や成果、満足度のことです。

 

一つ目は、A領域を学びつつもBCDについても浅く心得ておくような『T字バランス』、二つ目はBCDに広く意識を配りつつも本業領域であるAに重点を置くような『優先順位センサー』です。

 

 

つまり、年齢やポジションを含め、自分が置かれた現在の状況、あるいは少し先の展開も踏まえ、ABCDの学習配分を調整していくスキルこそが、社員を視野狭窄に陥らせないポイントだと言えます。この点を踏まえ、英語研修を考えてみましょう。多くの企業において、英語は最優先課題ではないことは重々承知しております。しかし、かといって、国際法、国家戦略、マーケット現状などを含む国際情報オンチであっては日々の国内努力の方向性がそもそも間違ってしまい、国際競争で惨敗してしまうリスクもあります。この国際情報リテラシーを支えるのが英語ということになります。

 

ここで言う英語は、習得までに膨大な時間を要する流暢な英語、思考リソースを大幅に奪ってしまう細かく高度な文法知識を駆使した上級英語とは違います。先述の二つの視点に基づき、可能な限りハードルを下げた極めて実践的かつ基本的な英語力を目指します。結果、費やす時間も最小限に留まり、空いた時間は他の研修にあてがうことが十分可能になります。

 

それでは具体的に『タイパの良い英語研修』運営のポイントについて見ていきましょう。

目次

 

1. すでにやっていること、できていることと新しいスキルをつなげる

英文読解や聴解の演習を行っておりますと、そのアドバイスのほとんどが、日本語の読書でも無意識に行っていることだとわかります。極論を言えば、普段日本語で無意識にやっていることを意識的にやっていくのが英文リーディングのコツと言えます。

たとえば、英語読解や聴解のスピードを上げる際に有効な考え方として、コンテントワード(内容語)というものがあります。100ワードの英文であれば、その中から、大意把握に必要な何パーセントかの単語だけを拾えば良いし、その結果、読解スピードも上がり、聴解もキャッチアップしやすくなります。しかしながら、このコンテントワード、実は日本語の速読の際にも無意識に行っていたりします。日本語の会話においても、100%相手の話に集中しなくても、それとなく相槌が打てるのも、おそらくコンテントワードから会話の大意を把握できているからなのだと思います。

【コンテントワード学習動画】

このように、英語学習を「日本語で普段やっていることを英語で再確認する作業」と再定義すれば、心的ハードルが下がるばかりでなく、費やす英語学習時間も大幅に削減されることでしょう。特にビジネスパーソンであれば、わざわざ英語学習用の教材を用意するまでもなく、「仕事上、自分のキャリアアップ上、どうしても読みたい海外の記事や論説」を使って読めばいい。自分の専門領域であれば、日本語ベースの知識が英語読解や聴解の助けにもなるでしょうし、AIに和訳してもらった際に、誤訳も見つけやすいことでしょう。

 

コンテントワードという知識ひとつ知るだけでも、英語学習というものが、他のもっと大事な学習をわざわざ犠牲にしてやるものではなく、あくまでも、日本語での学習や情報収集の延長線上にある、情報収集作業に過ぎないという感覚が生まれてくると思います。これもタイパの良い英語学習にとって大切なスタンスです。

 

2. 語学につきまとう暗記に対する考え方

たとえば『製品Aが弊社の主力商品です=Product A is our flagship product.」を覚えたいとしましょう。通常であれば、このフレーズを何回も書いたり、音読することでしょう。しかし弊社はあまり推奨しません。なぜならば、背伸びして覚えたflagshipを度忘れしてしまった時点で、英語が途絶えてしまうからです。これが一文完璧暗記主義の難点と言えます。

 

そこで推奨するのがパラフレーズ(言い換え)です。製品Aが主力商品であることを、様々な角度から伝えてみるということで、ここには絶対的正解はありません。仮に便宜上上記の英文を暗記したとしても、いざと言う時に忘れても全く構いません。以下に一文完璧暗記主義の発想と、パラフレーズの発想の違いを対比してみましょう。

 

●一文完璧暗記主義の思考の流れ:「製品Aが主力商品だということを伝えよう」→「先日覚えた表現を使おう」→「Product A is flag‥‥あれっ?”主力商品”って何ていうんだったっけ…」→≪沈黙≫→「やはり暗記は難しいなぁ。自分には語学センスないみたい」

●パラフレーズの思考の流れ:「製品Aが主力商品だということを伝えよう」→「先日覚えた表現を使おう」→「Product A is flag‥‥あれっ?”主力商品”って何ていうんだったっけ…」→「本当はもっとカッコイイ表現で言いたかったけどひとまず、Product A is our main product.でいいや」→≪シンプルな英語の連発で会話を乗り切る≫→商談はテンポよく言いたいことが言えて、かつ相手に主旨が伝わればいいから、こんな感じでやっていこう」

 

パラフレーズの利点は、咄嗟の英語が自由自在に出てくるようになるだけでなく、そもそも絶対的正解がないことを肌身で理解するため、暗記へのこだわりが氷解し、英語への心的ハードルも著しく下がり、「いつでもどこでも平易な英語で話せる」状態になることです。

【パラフレーズのインストラクション動画】

平たく言えば、 「AがだめならBがある。BがだめならCもある。そもそも正解なんてないから、自由に言えばいい」というマインドを育ててくれるのがパラフレーズ。基本的な語彙や文法を運用できる中級以上の学習者であれば、パラフレーズさえマスターすれば、もう暗記に膨大な時間を注ぐ必要はありません。つまりパラフレーズはタイパの良い英語学習の主要要素のひとつと言えます。

 

3. 語学につきまとう反復に対する考え方

「パラフレーズの効能はわかった。しかしそのパラフレーズを支える基本語彙はどうやって身に着けるのか?咄嗟に話せるようになるには、やはり対象語彙を何度も声に出したり、聞く必要があるのではないか?」

 

こういう心配の声もきっとあることでしょう。言い換えると、「反復なしで語学は身につかないのではないか?」という懸念ですね。タイパの良い英語学習の場合、反復は「一定寝かせた後の再会」と言い換えられます。例えば英語リーディングでのcountermeasure(対策)の覚え方について暗記主義、寝かせ再会派の思考の違いを以下に比較してみます。

 

●暗記主義の思考の流れ:≪英文を読んでいて新出単語countermeasureに遭遇し、調べる≫→「なるほどcountermesureは”対策”という意味なんだ。覚えたいから、10回声に出しながら書こう」→≪数日後、他の英文でcountermeasureに遭遇≫「あれっ?この単語、前もチェックしたけど忘れてしまった~やはり暗記が苦手な自分は語学には向いてないなぁ」

 

●寝かせ再会派の思考の流れ:≪原書を読んでいて新出単語countermeasureに遭遇し、調べる≫→「なるほどcountermesureは”対策”という意味なんだ」→≪数日後、同じ原書を読み進めていたら、再度countermeasureに遭遇≫「あれっ?この単語、前もチェックしたけど忘れてしまった。何度も登場するってことはキーワードなんだろうな。もう一度調べよう」→この後も、間隔を置いて、遭遇する度にチェックし、気が付くと既知語化していた。

 

「重要な単語だから暗記しなければならない」というのが暗記主義の発想。一方、「重要な単語なんだから、何度も登場するはずだから、今無理に暗記する必要はない=出会う頻度に任せよう」というのが寝かせ再会派の発想です。

ちなみにcountermeasureに関する動画を添付しておきますが、こちらも、一度視聴して「そうなんだぁ」で終わらせて問題ありません。この後の英語学習で再会したときに、「あッ、この単語動画で一度視聴したことある」と思い出せば十分です。

【countermeasureに関する解説動画】

 

4. AI活用による英語省力化は、そのまま他領域研修時間に

AIに何でも頼っていては思考力が衰えてしまうのではないか?

この着想が最も当てはまるのは英語よりも日本語の方だと思います。例えば何らかの問題の解決策を考える際、通常の場合、日本語でABCとアイディアが出た上で、それをAIに英訳してもらうというのが一般的かと思います。

ここを無理に最初から英語で考えようとしますと、英語力不足が邪魔をして、そもそもアイディアがAで尽きてしまう恐れがあります。

創造的な仕事でもっとも重要なのは、「日本語で浮かんだアイディアAを自力で英語化できる力」ではなく、「英訳はAIを補助的に使いつつも、まずは日本語でアイディアA、アイディアB、アイディアCと潤沢に出せる発想力や、十分に説得性のあるアイディアを日本語で生み出せる提案力」の方です。

こうしたことから、時間を割くべきは日本語での思考の方であって、英語化の時間はAIで極力節約するのが現代流英語運用術です。

以下は英文ライティングのインストラクション動画ですが、英語でどう表現するか?ネイティブスピーカーはどんな表現を好むか?という視点から離れ、「相手を説得する論理構成」に重点を置いています。英文チェックにおいても、「日英問わず、論理性が担保されているか?」「日英問わず、相手方を説得できるだけの情報が網羅されているか?」など、内容がメインとなりますから、英語の表現力そのものの精査には時間を取られません。「ネイティブ話者はAよりもBという表現を使う」という指導は、そもそも「そのネイティブは誰か?」という前提がはっきりしませんし、実際のビジネスでは、「あのアメリカ人のAさんに刺さるかどうか」というような具体的な相手を想定した上での推敲が重要であり、一般論としての、「ネイティブらしい英語」の探求はあまり意味がありません。

【戦略的英文ライティング学習動画】

 

5. 相手方の思考やスタンスを探る

ビジネス英語で一つ抑えておきたいのは、外国人は様々な知的な会話を振って、相手の認識レベルを探っていることが多いということ。もちろん、だからと言って、いつでもどこでも政治経済を含め、抽象度の高い話題を自分から振る必要はありません。ただ、相手方のざっくりとした価値観はそれとなく抑えておいた方がうまくいくことも多いです。ここでは深く触れませんが、日本人とは違う欧米人の発想についてある程度知っておくとよいでしょう。よく「日本の常識は世界の非常識」などと言われます。この根底にある発想をそのままに言語だけを英語にしても通じなかったり、誤解されることもありますから、補助的な知識として持っておくとよいでしょう。これも、英語だけをこねくりまわす時間の回避につながると言う意味では、タイパの良い英語学習の一要素と言えるでしょう。

【デジタル時代の世界標準的思考を知っておこう】

【哲学から見る、日本人らしさ、欧米人らしさ】

【日本と海外における情報に対するスタンスの違い】

 

6.属人的スキルに切り込む英語

ここで自学副教材として並行利用できる通信講座をご案内します。研修は何よりも実体験重視であるため、実体験をさせて浮上した受講者たちの疑問やコメントに講義的なアドバイスを載せるようにしています。単なる知識としてAの講義を展開するよりも、受講者から「実際にAをやってみたが、うまくいかなかった。どうすればいいか?」という質問を受けてからAについて講義する方が自分事として聞いてもらえるからです。

 

とはいえ、知識体系としてとりあえずビジネススキルを概観しておくことは、将来実践の場面に遭遇する際にも役立ちます。「いきなり英語で交渉しろと言われて頭が真っ白になった」ではなく、「いきなり英語の交渉に直面することになったが、おおよそのイメージはできている」という状況に受講者を誘導しておくことは十分可能です。それが以下に紹介する通信講座です。プレゼンテーションに関するビジネス書は割と多いのですが、問題はネゴシエーションの方です。著者である私も、製作にあたり、ネゴシエーション英語の参考書を探したのですが、ほとんど見当たらなかったため、自分自身の体験を、経験の有無にかかわらず誰でも応用できる10個のテクニックに落とし込みました。本来であればベテランの個人的体験によることが多い「属人的スキル」を可能な限り組織内で共有できる「形式知」に変えることを目指したのが、本通信講座と言えます。

 

【本ブログ著者監修のプレゼンテーションの通信講座(ガイダンス動画)】

【英語でビジネスコミュニケーション実践編:プレゼンテーション・ネゴシエーション(詳細情報)】

 

7.研修実績

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