リモートワーク時代のIT企業向け英語コミュニケーション戦略

目次

 

1. リモートワーク時代の課題とは?

音楽好きの方なら、「ほとんど同じパフォーマンスなのに、ライブコンサートの感動は動画やCDでは得られない」という経験をされたことはありませんか?

これは、ビジネスにおける対面とリモートコミュニケーションの違いにも通じるところがあります。あえて言葉にするなら、それは「言語化できない当事者の熱量や微妙なニュアンス」のようなものでしょう。

つまり、円滑なビジネス遂行において、リモートワークは、当事者を動かす熱量やニュアンスの伝達という点で、どうしても対面コミュニケーションに劣ってしまいます。リモートワークでは、この部分をいかに補うかがカギとなります。

それでは具体的に、どのような点に留意すべきか見ていきましょう。


2. オンライン会議における課題と対策

前述のとおり、オンラインでは対面と比べると、熱量やニュアンスが伝わりにくい傾向があります。そこで、オンライン会議で確実に伝わる工夫が必要です。この確実な伝達に有効なのが英語です。あるいは英語で養われた論理的な日本語です。なぜなら、英語は原則として主語と述語が明確に言及されるため、受け手の勝手な解釈の余地が少ないからです。さらに、結論から述べるため、一番相手に伝えたいことがストレートに伝わりやすいことも英語の利点です。

以下に、オンライン会議でよく使われる英語表現を日英対訳でご紹介します。これらの表現は、完全に暗記することが理想ですが、何度も視聴し、説明欄の英文を黙読することで、やがて自分の表現として定着していくでしょう。ちなみに、暗記のコツは、「主旨が同じなら多少の表現のズレはOKとする」ことです。表現集に「Thank you so much.」や「Let’s get started.」とあっても、実際には「Thank you very much」や「Let’s begin.」と言っても全く問題ありません。むしろ、気にせずにオリジナルの言い方で積極的に発言していくべきでしょう。

【動画:リモート会議英語表現】

定型表現は対応できても、肝心の複雑な意見となると、英語どころか日本語ですら、とっさに言葉が出にくいこともあるでしょう。この場合、日英問わず、あらかじめ自分の発言メモとして用意しておくことをお勧めします。

ただし、メモの棒読みは相手に伝わりにくいですし、ましてオンラインであればなおさらです。アナウンサーが原稿をちら見しては顔を上げて伝える姿を想像しながら、自然な読み上げの練習だけはしておきましょう。そして、中上級者であれば、当日はその原稿から表現が逸脱することを恐れず、その場で思いついた表現で話してみてもよいでしょう。繰り返しますが、聞き手に「いかにも棒読みしている」と思わせないことが、話し手の熱量を相手に届ける最善の策といえます。


3. チャットツールやメールなどのテキストコミュニケーション:課題と対策

オンライン会議は便利ですが、全員が同じ時間に集まらなければならないため、どうしても時間の制約が発生します。チャットツールやメールはその点、思い立った時に発信できるので便利です。しかしながら、やはり「熱量とニュアンス」が伝わりにくいのはテキストコミュニケーションも同様です。

原始的ではありますが、強調したいところは大文字にするのも良いでしょう。いつもは「Thank you.」と返信する人が、珍しく「THANK YOU!!!!!」と書いてくれば、その気持ちはきっと伝わることでしょう。また、文字数や単語数自体が熱量のバロメーターにもなりますので、重要なメッセージの場合、結論だけでなく、その背景や理由などもぜひ添えるようにしましょう。さらに、確実に相手に伝え、かつ、相手に相応の行動に移してもらいたいときは、要件をテキストで伝えた後、電話などでフォローしておくのも有効です。

ちなみに、非英語ネイティブである日本人は、英文をじっくり推敲できるテキストコミュニケーションを好む傾向がありますが、英語ネイティブの場合、やはり表情などの非言語的要素を把握するため、電話や対面でのコミュニケーションを好む傾向があるようです。総合すると、後で「言った、言わない」の争いを回避したり、誤解を回避するためにはテキストコミュニケーションを多めに使い、テキストでは伝わりきらないニュアンスや複雑な事情の説明などは対面(または音声通話)コミュニケーション、と使い分けるのが良いでしょう。


4. 多国籍チームで成果を出すための異文化理解と英語コミュニケーション

何か意見を交換する際、冷静かつ生産的に話し合いを進めるためには、以下の3点を意識すると良いでしょう。

1.ファクトと意見の区分け

2.賛否両論など、両極もしくは多極的な視点

3.反対意見への敬意

ファクトは実際に見聞きした情報だけでなく、メディアで得た情報も含まれます。可能であれば情報源も示すと信頼性が上がります。

両極性や多極性については、「私はAという理由で賛成だが、反対する人はおそらくBという理由が多いのかもしれない(I agree with this because of A, but I imagine someone might disagree with it because of B)」というような言い方や、「少なくとも私の周りにはAを推す人が多いが、BやCを推す人の意見も聞いてみたい(At least most people around me support A. However, I also want to hear others supporting B or C.)」というような心がけがポイントでしょう。

反対意見への敬意については、相手を論破するという「戦闘モード」ではなく、合意形成に向けた一つの精査プロセスだと捉えて議論すれば、おのずと反対意見からも有益なエッセンスを吸収しようという気持ちになることでしょう。これはある程度の議論の場数が必要かもしれません。しかし、英語圏の人は、比較的、論理的な話の進め方や、対立する議論を交わすような訓練を受けていることが多いため、議論に慣れていない日本人にとっては、きっと良い訓練の場になることでしょう。


5. IT業界を概観し、ミクロとマクロ両視点をつなげる

以下に、ITロードマップ2025年版(野村総合研究所 IT基盤技術戦略室 NRIセキュアテクノロジーズ)のブックレビューを添付します。同書は毎年更新され、IT業界の変化を振り返るとともに、今後予想される様々な技術的展開についても論じられています。数年先の変化や大局的な業界観・社会観もブラッシュアップすることで、日々の目の前にある業務の解像度も変わっていくことでしょう。

【動画:ITロードマップ2025年版】

 

6.属人的スキルに切り込む英語

ここで自学副教材として並行利用できる通信講座をご案内します。研修は何よりも実体験重視であるため、実体験をさせて浮上した受講者たちの疑問やコメントに講義的なアドバイスを載せるようにしています。単なる知識としてAの講義を展開するよりも、受講者から「実際にAをやってみたが、うまくいかなかった。どうすればいいか?」という質問を受けてからAについて講義する方が自分事として聞いてもらえるからです。

 

とはいえ、知識体系としてとりあえずビジネススキルを概観しておくことは、将来実践の場面に遭遇する際にも役立ちます。「いきなり英語で交渉しろと言われて頭が真っ白になった」ではなく、「いきなり英語の交渉に直面することになったが、おおよそのイメージはできている」という状況に受講者を誘導しておくことは十分可能です。それが以下に紹介する通信講座です。プレゼンテーションに関するビジネス書は割と多いのですが、問題はネゴシエーションの方です。著者である私も、製作にあたり、ネゴシエーション英語の参考書を探したのですが、ほとんど見当たらなかったため、自分自身の体験を、経験の有無にかかわらず誰でも応用できる10個のテクニックに落とし込みました。本来であればベテランの個人的体験によることが多い「属人的スキル」を可能な限り組織内で共有できる「形式知」に変えることを目指したのが、本通信講座と言えます。

【本ブログ著者監修のプレゼンテーションの通信講座(ガイダンス動画)】

【英語でビジネスコミュニケーション実践編:プレゼンテーション・ネゴシエーション(詳細情報)】

7.研修実績

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