企業英語研修事例シリーズ1:メーカー・若手社員

昨今、若手社員に少しでも長く在籍してもらうために、企業では様々な工夫をしています。英語研修は若手人材の確保という課題に対してどのように貢献できるのでしょうか?今回から具体的な事例をご紹介していきます。

 

特に昨今は、単なる英語力の向上に留まらず、平素の日本語の質向上、平素のコミュニケーション力の向上、母語を「国語」ではなく「言語技術」として学んできた欧米エリートとの議論体力、文化や価値観の違う外国人へのマインドチューニング という4点を絡ませた英語研修へのニーズが高まっています。英語だけできても仕方ないという認識、国語力という財産が見直されていることの表れかもしれません。また、こうした本来的に必要なスキルをカバーすることも、若手人材を企業内で有効活用していく一つの方略と言えるでしょう。

目次

1.相談内容

「若手研修は、社員のビジネススキル向上が一番の目的ではあるが、教育成果を実地で活かし、自社内でしっかりと成長のループを形成してほしい、中長期的な狙いもある。研修は研修、業務は業務、と別々に考えるのではなく、なるべく両者をつなげて、英語を他のビジネススキル同様、自分たちの業務必須スキルとして認識してもらえるような仕掛けが欲しい。」

 

このような相談から、教育とは人を育てるという側面だけでは、施策側の自己満足に終わってしまう、昨今の人事育成の難しさが伺えます。せっかくビジネス英語を扱うのであれば、ビジネスコミュニケーションでもっとも難度が高いと言われている、説得力や交渉力に少しでも英語を連動させていけば、若手の「自分事感」もかなり変わるのではないでしょうか。若手の教育現場で痛感するのは、もはや教育施策側が一方的に与えるスタイルは限界を迎え、学習者本人の自学や、学習者同士のコミュニケーションを通して自ら課題を見つけてもらい、教師はそのファシリテーター役・見守り役に徹するスタイルに移行していることを私自身痛感中です。

2.研修概要

・対象:

入社2―3年目の若手社員を対象としました。理由としては、このステージですと、ある程度実務経験もあるため、ビジネス英語がかなり自分事として腹落ちすると思われるからです。特に語学は、本業が多忙過ぎる年代に突入すると、いよいよ時間がさけられなくなりますので、この年代のうちに、しかるべき手を打っておくことは、その後、むしろ語学から解放されて、本業にほぼ100%集中できるようになり、このことがビジネスに与える影響は非常に大きいです。

・期間:

英語上級者の共通点として、人生の一時期、集中して学んだということが挙げられます。万年初中級で、気が付くと10年、20年経っていたというような事態はビジネスでは回避しなければなりません。こうしたことから、隔週1回3時間×8週の4か月(24時間)に設定しました。若手とはいえ、多忙なビジネスパーソンであることには変わりません。

 

学生のような英語漬けのような環境は提供できませんので、あくまでも業務優先、むしろ業務で発生したコミュニケーション課題を取り上げて、日本語、英語両方からコミュニケーションの最適解を目指していただく。そのためには、研修と研修との間に、2週間空けて、自分自身現場で様々なコミュニケーションを体験し、かつ、自学で相応のインプットを積み上げていただくことが大切です。この2週間のマイペースでのインプットがあって、研修でのアウトプットが活きてくるのです。

・ゴール:

積極的なアウトプットを支える盤石なインプット力、すなわちリスニング力とそのベースとなるリーディングを鍛えていただくために、TOEICで効果測定を行います。実際に高度な議論に耐えうる英語力を目指すのであれば、TOEIC800点は狙いたいところですので、上級クラスは1クール、中級クラスは2クールで達成できるよう設計しました。なお、TOEICを使った英語トレーニングは、多忙なビジネスパーソンを考慮し、極力無駄な労力を使わないものを厳選しました。

・内容:

リスニングとリーディングは市販のTOEIC教材を使い、実際のコミュニケーションでの、英文の読み進め方、英語の聞き方を学びます。テストオタクやスコアチェイサーを養うのではなく、あくまでも押しの強い外国人と対等に渡り合っていく上で必要な受信力、ビジネス遂行に必要な海外情報の消化を目指したL・Rトレーニングを提供し、その先に結果としてのTOEICスコアアップをイメージしていただきます。

 

多忙なビジネスパーソンを考慮し、リスニングトレーニングは、なるべく不必要な要素を排除し、着実に実力に直結するものを厳選しました。その一例が、「単語拾いリスニング」です。これは全文を完璧に聞き取れずとも、聞こえてくる周囲の単語から、新出単語の意味を推測し、拾い集めた単語から、大意をつかむ練習です。

【単語拾いリスニングの解説放送】

 

発信の方は、オリジナルプリントを使い、❶パターンプラクティス と ❷トピックトレーニングの2本立てで行いました。パターンプラクティスは、最初にオリジナル英文法動画を視聴いただいた上で、知識としての英文法を身体技能レベルに落とし込むために、日本語と英語が併記された資料を使い、反射的に英語が出てくるまで繰り返します。一方トピックトレーニングの方は、特にモデル英文は設定せず、与えられたトピックについて自分なりに考えをまとめ、英語化していくトレーニングです。なお❶と❷のバランスは、初級に寄るほどに❶優位、上級に寄るほどに❷優位となります。

【パターンプラクティス動画】

 

・効果測定:

受信力(リスニング・リーディング)はTOEICで、発信力は日英併用でエッセイを書いていただきました。なお、ライティングにおいて、最後はご自身で校正していただくことを条件に、自動翻訳の部分的使用は認めました。また、思考の解像度を上げるため、箇条書きやパワーポイントによる簡易なまとめ方ではなく、しっかり文章で書いていただきました。

今回のケースは、特にAIの使用について制約はなかったため、むしろ積極的に使っていただき、自動翻訳が生成した英文がもたらすリスクについても受講者と議論を交わしました。その際、受講者自身が自動翻訳の失敗体験談を持っていると、議論がとても建設的かつ実践的なものになります。

【思考の解像度と文章の関係~Amazonに学ぶ】

【ライティングの基本ガイドライン】

TOEICを効果測定として使うにあたり、このテストが実務にどのように関係し、かた貢献していくのかについても社員間でディスカッションしていただき、業務を含め、自分達がやることに自ら意義を探ることも体験いただきました。

【なぜTOEICを受験するのか、その意義についての動画】

・お客様からのフィードバック:

自動翻訳丸投げリスクを身をもって体験いただけたことへのお客様からの反響は意外に大きかったです。また、あくまでもゴールを身近なビジネスコミュニケーションに設定したため、英語自体のハードルは不必要に高くなることもなく、若手社員の方の現行の英語力というリソースをかなり使えたことも、学習モチベーションにつながったようです。やはり企業英語研修で外せないのは、不必要に英語のハードルを上げてしまわず、どこまでも実践性・再現性(研修後も各自が使える)に重きをおくべきだということを再確認しました。

・今後の展開:

少し実務期間を置いて、半日程度のレビューセッションを設定する予定です。ここで研修・自己学習・現場3つの学び場の統合を図ります。これを行わないと、「研修で学んだことが、実地では忘れられてしまう」というリスクが懸念されますので。

 

3.お勧め教材

以上、実際の研修事例をご案内しました。ここで自学副教材として並行利用した通信講座をご案内します。通信講座の魅力は、研修運営側に一切のオペレーションの負担がかからないことです。一方、社員側にとっては、自分のペースで進められること。ただ、通信講座や自学用アプリ共通の課題として、自学のペース配分がわからなくなったり、実際の英語運用とイメージが結びつかないことが挙げられます。上記の研修では、通信講座の添削課題提出期限を研修時にリマインドしたり、社員が実務上で直面したコミュニケーション課題を取り上げ、通信講座教材の一部分を関連させて講義するなどして、活用率の向上に努めました。

 

下記通信講座が扱っているプレゼンとネゴシエーションは、ビジネスパーソンにとっては、高難度かつ高汎用性スキルに属するものと言えます。これを可塑性の高い新入社員時代に身に付けさせておくことで、社員はさらなる自己研鑽や実践の場を求めることになり、日々のビジネスは、こうしたスキル発揮の場としての意味合いを帯びることになり、社員の成長モチベーションにも大きく寄与することになります。

【本ブログ著者監修のプレゼンテーションの通信講座(ガイダンス動画)】

【英語でビジネスコミュニケーション実践編:プレゼンテーション・ネゴシエーション(詳細情報)】

4.研修実績