「英語は読めるけど話せない」と「話さない」の違い

「英語は読めるけど話せない」という声をよく聴きます。前半の「英語は読める」は程度の差こそあれ、多くの方々にとっては本当のことだと思います。一方後半の「話せない」を掘り下げていきますと、実際に話してみて実感する「話せない」と、そもそも「話さない」に分かれます。今回は後者の似て非なる「話ない」と「話ない」の壁の乗り越え方について見ていきます。

 

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目次

 

1.近くて遠い、日本語の「話せない」と「話さない」

私たちの仕事の基本は「日本語」です。これは外資系企業とて全く同じです。つまり、外国人と英語でやりとりするときでさえ、日本語での思考が盤石であってはじめて、英語云々を論ずることができるのです。

たとえば、英語での自己紹介もその出来は日本語の質と量にかかっています。弊社の英語研修ではまずは日本語で自己紹介ワークをしていただきます。2人で5分程度の時間を提供します。すると、その中の何組かは途中で会話が終わってしまい、お互い無言のままで時間を持て余しています。

これは、「話せない」のでしょうか?それとも「話さない」のでしょうか?「せ」なのか「さ」なのか一文字の違いは大きいです。

具体的にはこんなふうに違います。

「話せない」の方は、それなりに会話を続けようという意思はあります。がんばって質問したりして時間を会話をつなぎます。会話が途切れたら、違う話題を振ってみます。それでも会話が続かない。これが「話せない」の世界。何かやってみてできなかった。その苦い体験から、色々反省し、次の方略を考えます。この繰り返しで、だんだん「話せる」に近づいていきます。

「話さない」は、そうした試みを最初から放棄した状態です。「話せない」のような、その後の展開があまり期待できません。つまり冒頭の図のように、「話せない」と「話さない」の先に待っている世界は全く違います。

 

2.日本語の「話す」「話したい」が英語の「話せる」の原動力

私はビジネス英語講師です。しかし入り口としての日本語にこだわるのは、日本語の「話せない」の中に、コミュニケーションの成長の可能性を感じるからです。こうしたこともあり、英語云々を論じる前に、質問や話題転換などを総動員して、まずは5分間の会話を持続させることから始めます。

以下、「話さない」から「ひとまず話す」への広げ方の例です。

●相手の専門分野や趣味の話についていけないとき→質問のチャンスととらえ、「●●って何ですか?」から始めます。つまり相手に質問を次々と向けて、ひとまず相手に話させる戦術です。これはとりわけ外国人や、英語圏の人に有効です。なぜならば、多少の個人差はさておき一般的に外国人の方が多弁の傾向があるからです。

●お互い話題が見つからないとき→天気の話題、健康の話題などから始めます。花粉症の人であれば、それを話題に使います。極端に寒かったり暑かったりしたら、それを会話の糸口にします。これは互いに文化的背景が違う外国人同士の会話で本領を発揮する話術でもあります。

このあたりを日本語でできるようになれば、「英会話のパスポート」を手に入れたのも同然です。

 

3. 英語圏の加点主義に学ぶ

ここからは、英語の「話す」「話さない」に話を進めます。そもそもなぜ日本人は「英語が話せない」より「英語を話さない」ことが多いのか?これは日本社会に浸透している「減点主義」の影響も大きいと思います。「話して何か失敗をしでかすくらいなら、何も話さない方がいい。失敗は減点になるから」という深層心理ですね。しかし、この状態では、どれだけTOEICスコアを上げようが、語彙力を増やそうが、文法を勉強しようが、ネイティブ並みの発音を練習しようが、やはり「話せる」側にはなかなか行けないと思います。なぜならば、「話す」というのは失敗、すなわち不格好な自分を晒すというステップが必ずあり、「話すことの失敗や減点」を気にする心理があると、その先の「話せる」ステップに進めないからです。

 

この点に関しては、英語圏の加点主義に学ぶのが賢明でしょう。先に拙い英語力をあらわにしてしまうのです。そうして相手の期待値を敢えて落としておくのです。そこから何か気が利いた発言のひとつでも話せたら、私たちの点数は上がっていく一方で、これ以上の減点の心配はありません。

 

様々な国籍の人たちが入り混じるグローバルな場面で一番重視されるのは、なんといっても「話す内容」であり、英語云々、すなわち言語としての洗練性は二の次です。したがって、まずは「話したいこと」を俎上に乗せてもらいます。「話したいこと」がなければ、その先の日本語の会話はおろか、英会話にも進めませんので。研修では、発話を促すために、ある程度話すべきテーマは提示します。

 

いきなり英語で話すのはハードルが高いと思われますので、以下のメニューから選んでメモを作っていただきます。

研修ではこの4つから適宜選択していただきます。また試しながら、メモ形式を変えていくのも自由です。各メモのメリット・デメリットとしては、Aであれば、ひとまず言いたいことを俎上に載せたいときに便利です。これが余裕でできるようになれば、Bに進み、英語でアウトラインやリストアップしてもよいでしょう。箇条書きは誰でもすぐにできるのがメリットです。一方、文章は伝達の完成形であるため、言いたいことがきちんと言語化されているかどうかを確認する際にはとても有効です。伝わりにくい英語の原因のひとつに、わかりにくい日本語が根底にある場合も多々ありますので、Cでの日本語検証はとても重要です。このあたりがクリアになれば、Dに進んでみるのもよいでしょう。あるいは用意した日本語にひっぱられて、英語が出にくいことがわかれば、BやDのように最初から英語で下準備をしてもよいでしょう。ここは試行錯誤を重ねて色々変えていきます。研修が進むと、こうした事前メモ抜きの「とっさの英会話」も体験していただきます。

 

なお参考までに、箇条書きよりも文章を強く推奨するAmazonの会議術に関する動画を添付しておきます。

【Amazonのすごい会議~ブックレビュー】

ある程度メモが出来上がった状態で、今度は英会話を実践していただきます。ここで、やっと「英語を話さない」から「(話そうとしてみたけど)英語が話せない」に前進します。

制限時間をめいっぱい使って英語を話していただいたあと、日本語タイムを設けます。ここでは、「本当はこういうことを言いたかった」ということを日本語で確認したり、うまくできなかったこと、新たに発見した「英語課題」をシェアしていただきます。

以上の手順を一覧にするとこうなります。

 

いかがでしょうか?最初のチャレンジから、色々失敗やうまくいかないストレスはあるものの、成長に向かって自己加点されていく姿が浮かびますでしょうか?このタスクをやる限り、「だからやっぱり英語は話さないでおこう」という結論に戻ることはほとんどありません。

 

話す力は書く力と連動しています。弊社の英語研修では、少しでも研修時間を節約するために、受講者に空き時間を利用して英文ライティングを提出していただきます。ここに受講者の日本語ベースでの会話の癖が如実に表れます。時にかなり細かなフィードバックもしますが、基本的に弊社は「出力加点主義」ですので、まずは心の中にあるものを言語として出力したこと自体を評価します。出力するから、その結果、どうすればさらによくなるかが見えてきます。スピーキングに限らず、ライティングにおいても、「書けない」と「書かない」の世界は全く違います。あくまで「書く」からこそ「書けない現実」を知り、そこから成長していくのです。

 

4.知識が増えすぎると高くなる「スピーキングの壁」

長年染みついた「失敗恐怖症」を脱却するためには、知識への依存度を敢えて下げておくのも一計です。もちろん、巷にあふれる、様々な円滑なコミュニケーションのコツを知識武装しておくことも時には有効でしょう。しかし、気を付けなければならないことは、コミュニケーション系知識を詰め込み過ぎた結果、遵守しなければならないルールが増えてしまい、キャパオーバーとなり、やはり「話さない方が安全」に戻ってしまう可能性があります。これが英語となればなおさらです。これらはむしろ、実際に色々やって失敗したときの「挽回策」ぐらいにとらえておくのがちょうどよいかもしれません。

ということで、先回りして、「こう話せばいい」「こう話してはいけない」という知識を詰め込むよりも、不格好な己の英語を自覚するために、とにもかくにも、まずは話してみる、書いてみる、ということがとても大切です。

ところで「書く」といえば、Google 翻訳やChat GPTなどのAIの力を借りるということも思いつくことでしょう。これは企業様の方針を尊重しますが、特に制限が設けられていなければ、AIツールも大いに使い、ある程度失敗や不都合を体験することも大切です。例えば、受講者の中には何らかの翻訳ツールを使って英文レポートを提出する方もいます。しかし、話の論理性、説得性という側面まではAIはカバーできません。結果として、「英文ひとつひとつは文法的に正しいが、全体的にみると、矛盾や、理解しにくい箇所が散見されるレポート」が出来上がります。そしてその部分の修正は、書き手本人が練りなおすことになり、このやり直しこそが、論理的なライティングの鍛錬へとつながっていきます。

 

Aiを駆使することを推奨するということは、意外にも、大いに間違い、大いに振り返るということにつながります。完全使用禁止や完全依存、どちらでもない中庸の道もあるということを体験いただき、賢く文明の利器と向き合っていただきたいと思います。このあたりの感覚は若い世代の方が鋭く、AIツールを過信することなく、自分自身の英語力の鍛錬にコミットする方がとても多い印象です。

【Chat GPTなどのAIとのほどよい距離感】

【Chat GPTで英語の苦手意識を乗り越えよう】

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5.研修は「話す」に必要な思考・コミュ力涵養の場

アウトプット中心の研修にはひとつ大きな前提があります。それは受講者自身が日頃から研修以外の場で色々と思考の冒険をしている前提です。つまり日々様々なものを見聞し、あれこれ自分なりの考えを展開しているからこそ、その内的思考が英語という言語に反映されていくのです。ということは、英語研修は、平素の思考をさらに練り上げていく時間と言うこともできます。そして平素の思考とは、他でもなく、日本語での読書、日々のコミュニケーションでの試行錯誤などがベースとなっています。企業研修の文脈で言うと、日々のビジネスの進め方、とらえ方が英語研修で英語という言語に載せられることで、さらに洗練されていくということです。こう考えますと、社会人の英語学習は研修や机に向かっている時間だけでなく、日常のビジネスパーソンとしての思索や行動からすでに始まっていると言えます。

【聖書で、コミュ力アップのコツと英語を同時に学ぶ】

以上、「話さない」と「話せない」の違いから、ひとまず「話してみる」から始め、そこから「話せない」課題を俎上に載せて、コミュニケーション力を、失敗や不具合前提のもと、加点主義で引き延ばしていく道筋を追ってきました。とはいえ、あらかじめ、「うまくいくコミュニケーションの道筋」が描けるにこしたことはありません。事前のイメージングの重要さはプレゼンやネゴシエーションでも全く同じです。下記に案内いたしますのは、英語でのプレゼン・ネゴシエーションの通信講座です。2か月で学べるので、多忙なビジネスパーソンにお勧めです。また、プレゼンやネゴについて全くイメージがつかめていない新入社員への「ビジネス英語指南教材」としてお勧めです。

【本ブログ著者監修のプレゼンテーションの通信講座(ガイダンス動画)】

【英語でビジネスコミュニケーション実践編:プレゼンテーション・ネゴシエーション(詳細情報)】

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