Chat GPTも動員!社内英語研修実施のためのチェックポイント12選~グローバル人材育成(語学)のヒント

現代ほど英語の自己学習のための情報やツールに恵まれている時代はありません。膨大な情報やツールによって、誰もが英語自学可能な時代です。そんな時代背景を踏まえると、企業にとって重要なのは、細部にわたる英語学習法やツールの選定という川下よりも、全社的もしくは部門別・職種別・階層別の「大まかなゴール設定」という上流の施策です。学習方略策定の際にも、多忙な社員の本業専念に差しさわりのない学習量、ならびに本業に必要な知識や思考力増強につながるようなアプローチなどの精査が必要です。

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1. そもそもビジネス英語とはどんなものなのか?

実は業種や職種によって求められる英語は多様であるので、各企業で多少調整は必要なのですが、ざっくりと言うと次のような特徴があります。

1)(決して理想ではないが)必要とされてから学習着手が基本

「将来の業務展開を推測し、それに合わせて早めに英語学習を着手」

これが多くの企業が目指したいところではありますが、現実的にそのような奇特な方にはなかなかお目にかかれません。多くの方々が「今」のことにキャッチアップするのに精いっぱいなのが現状のようです。したがって、ビジネス英語には、「突然必要に迫られても即対応可能な機動性」も想定しておくとよいでしょう。

2)(決して理想ではないが)アンバランスが大前提

「リスニング・リーディング・スピーキング・ライティングの4技能バランスよく学ぶ」

これもビジネス英語の理想ではありますが、多忙なビジネスパーソンにこの理想は重すぎます。例えば、英会話レッスンを受けても実際に仕事で英語を話さないのであれば、それよりもリーディングによる情報収集や日々使う電子メールでのライティングに特化する方が現実的です。また、会話といっても実際には聞き取れなければ話すタイミングすらつかめないのですから、地味なリスニング一本に絞ってもよいくらいです。

3)(決して理想ではないが)最小限の労力でいかに欲しい成果を得られるかを常に考える

「語学の道は厳しいもの。毎日の学習を怠らない覚悟でしっかり取り組む」

これもやはり多忙なビジネスパーソンには高すぎる理想です。「今度こそしっかり取り組む」と決心したはなから、「語学などやっている場合ではない」というような緊急事態に見舞われるのがビジネスの常です。会社の命運がかかっているようなときに英語学習を中断するのはある意味健全な判断です。むしろどれだけのブランクがあってもめげずに再開できるような図太さやアバウトさこそ、ビジネス英語習得には必要です。そのためにも、「英語力=並々ならぬ膨大な努力の先にあるもの」ではなく「英語力=本業メインで補助的な学習で身に着けられるスキル」という再定義が重要です。

4)企業にとっての本業への貢献性にこだわる

企業人が英語力を考えるときに絶対に外してはならない要件です。例えば商談ならば、その商談を無事クロージングすることが企業にとってのゴールであり、アメリカ人並みの発音で滑らかな会話を展開することではありません。たとえ自動翻訳を使い倒したとしても、カタカナ英語でごり押ししたとしても、相手を説得しクロージングを迎えることができたら、その英語こそが企業にとっての正解なのです。この「本業力を支える英語力」というコンセプトさえぶれなければ、社員は必ず学習に前向きになるはずです。逆に本業に結び付くイメージができなければ、学習モチベーションはなかなか上がらないでしょう。それほどまでに、「必要性」に納得しなければ社員の心が学習へ動かないのがビジネス英語教育の企業導入の難しさなのです。

自社が目指す英語力再定義の際、主な取引国や関わりのある外国人がどのあたりの国なのかも重要です。たとえばインド人に限定されているのであれば、もはや米英のネイティブスピーカー云々という要素はなくなり、もっぱらインド人英語の制覇に特化すべきでしょう。あるいはノンネイティブのタイ人としか関わらないのであれば、TOEICの要件は外してしまうか、あるいは要求レベルを落としつつ、発信は中学英語の稼働率アップに徹するとよいでしょう。そもそもアメリカ仕込みの英語で話しても相手が理解できない可能性もあるのですから、それよりも伝わらない時には、平易な英語であれこれ言い換えるような即興力を鍛える方が役立ちます。

いずれにせよ、関わる国によって英語戦略が大きく変わるのも、一般的な英語学習との大きな違いのひとつです。

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5)完璧主義を飼いならす

完璧主義を捨てろということではありません。完璧さが求められる場面とそうでない場面で柔軟に対応せよ、ということです。つまり英文契約書やフォーマル度の高いプレゼン資料や公的資料には最善の精密さで臨みつつ、日常会話や社内報告書など「精密さより迅速性」が求められる場面では、自分の中の完璧主義を一旦懐に収めて、相手が求める程度の情報量・報告スピードに徹することが肝要です。この考えを教育施策に応用するならば、仮に社内の海外出張基準がTOEIC730点であったとしても、業務上有意義かつ絶対不可欠な人員であれば700点でもためらわずに派遣せよ、ということです。

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6)レベル混在という現場リアル

指導のしやすさや、学習者側の学びやすさなどの理由で英語研修は可能な限りレベル分けして運営されるのが一般的です。ただ、実際には英語のレベルに関係なく業務上必要なメンバーが同席し、英語で議論しなければならないのがビジネス英語のリアルと言えます。新入社員研修や管理職研修のように、一同が同じ場所に集合し、同一研修を受けざるをえない状況では、その状況を逆手にとって、多様なレベルの英語力の人たちで役割分担しあったり助け合ったりするような研修にしてみるのもよいでしょう。様々なタスクの中で、上級者はそうでない人が理解できる英語を発信する調整力を学びますし、初級者は初級者で現行の英語力でどのような貢献ができるのかを考えることができます。こうしたタスクを通して、「英語力の個人差に臆することなく、互いに協力して業務遂行に集中する」マインドセットを社内に醸成していきましょう。英語力に対するニュートラルな感覚、すなわち英語力由来の優越感や劣等感を抱かせない社風作りは、グローバルな環境下で果敢に本業展開していく上で非常に重要です。

2.自社社員にはどんな英語力が必要なのか?

それでは、自社社員に必要な英語力とはどんなものでしょうか?この問いに対して、TOEIC●●点や英検●●級という指標はあくまでも必要な英語力習得を促すための参考指標にしかすぎません。一例として、「英語力不足を理由に英文メール処理を後回しにしないマインド」「自動翻訳を駆使してでもコミュニケーションの迅速性をキープするマインド」「聞き取り力不足を理由に相手からの情報収集を音足らないマインド」というような「姿勢」がまず根底にあって、その姿勢を貫くために必要な「一般的英語力」がTOEICや英検で示されるスコアやレベルということになります。

以下、項目別におおよその英語力のイメージを見ていきましょう。

1)リスニング

専門性の高い職種であれば、果敢な情報収集は不可欠だと思うので、関連した海外の動画などにはアンテナを張っておいた方がよいでしょう。もちろんその際も、字幕があるのであれば大いにそれを活用しましょう。くれぐれも内容理解が不十分な状態に甘んじないこと。目的はあくまでも情報収集なのですから、字幕があるのであればそれを頼って、必要な情報を取り込むことを一番の目的に据えましょう。

一例として、半導体関連の企業であれば、海外動画の視聴から始めてみてもよいかもしれません。同業他社のプロモーション動画や、特定技術の解説動画など、「わざわざ英語の勉強をしている」感のないリスニングや英文字幕リーディングがお勧めです。

2)リーディング

社員の思考の源となる情報源が国内限定というのは今の時代あり得ないという時代背景、ならびに英文メール処理を考えると、基本的な英文読解力は全社員が身に着けておくべき英語力と言えるでしょう。その際自動翻訳の活用が問題となりますが、ある程度利用しつつも、その誤訳や訳し漏れを見つけられるぐらいの自動翻訳活用リテラシーは全社員で共有しましょう。場合によっては本文と真逆に訳されることもあるので、自動翻訳に丸投げしないようなマインドも重要です。

3)ライティング

昨今、初歩的なやりとりは自動翻訳で済ませられてしまいますので、むしろ複雑な内容こそきちんと言語化できるようにしておくべきでしょう。この部分は自動翻訳に丸投げできない領域ですので、まずは元となる日本語の文章の検証から始め、十分に論理的総合性が保たれ、かつ、簡潔な日本語になってから英訳を行うようにしましょう。「よく練られた日本語」は英語発信の盲点と言えます。

4)スピーキング

ライティング演習を通して、日本語における論理的整合性、情報の網羅性、簡潔性などが自社の要求レベルに到達した時点で、今度はそれらを話す力に変えていきます。話す力には、日常生活レベルの「瞬発性」が重要な領域と、先述の複雑な内容のように、多少時間がかかっても「内容の説得性」の方が重要とされる領域があります。この両者のバランスが非常に重要です。前者は円滑な人間関係の構築には不可欠ですし、後者は複雑な議論を展開する上で不可欠です。

5)語彙

ビジネス全般でよく使う単語は、例えばTOEICや一般のビジネス英語教材の学習を通して、文脈の中で自然に触れるようにしておく限り、受験のように語彙だけに特化した教材や単語学習はわざわざしなくてもよいでしょう。ただ、多忙なビジネスパーソンの場合、思考を休め、ぼーっとしたい、ただ受け身的に英語を自分に流しいれておきたいこともあるでしょう。そういう時には、市販の単語帳をぼーっと眺めているのもよいでしょう。英単語の暗記は無味乾燥な一面もある一方、疲れているときに受け身的に取り込みたいときにはかえって向いている学習かもしれません。かくいう著者も、仕事に疲れ、何も考えたくない時には、英単語帳を眺めることをよくやっていました。

【TOEIC用語彙学習動画】

何も考えず受け身的に聞き流す、視聴し流すと、かえって自分の中に取り込みやすいかもしれません。

【略語や時事用語中心の語彙学習動画】

次々と様々な用語が量産される現代においては、略語などから入ってみるのも一計です。

英語学習というより、時事用語や略語を味わう感覚で視聴し流しましょう。

6)英文法

今でも思い出すのですが、エンジニア集団にTOEIC研修を提供した際、何よりも文法問題演習時に嬉々として取り組んでいた姿が印象的でした。英文法は、社員を英語に興味を持たせるツールになることを実感しました。TOEICや実際の英語運用で求められる、スピード処理や大意を掴むような要素は一旦脇におき、学習者の好奇心に任せてみるのも一計であり、その場合英文法はかなり有力です。一方、英文法に囚われずどんどん情報処理したい社員・発信したい社員も相応にいますので、英文法の取り込みは、学習者の特性に合わせて適宜調整していけばよいでしょう。

英文法について一通り学ぶメリットとしては、「いざとなったら自力で解読できる」という安心感、「ひととおり英語の特性を把握している」という英語征服感などがあります。巷でよく言われる「文法なんて気にしないでどんどん話そう」は内容やスピード重視のビジネスコミュニケーションの理想でもあるのですが、そこに進めない几帳面な学習者にこのスローガンは少し飛躍感があります。一定時期しっかり英文法を学ばせてこそ、「英文法に縛られないおおらかな発信マインドセット」が育つ一面もあるのです。

【英文法の中でも割と実務で使える:準動詞系】

【動詞の理解が深まると、英語のモヤモヤ感もだいぶ緩和される】

3.社内英語研修実施のためのチェックポイント12選

1)「英語教育ありき」という前提で考えていないか?

これほどまでに様々な自学メディアがあふれる現代の究極の理想は、社員の英語力は自学で賄ってもらうことです。そんな中にあって英語研修は、あくまでも自学に任せることの弊害を最小限に抑えるために補助的に使うものであり、目的はあくまでも社員の業務遂行力向上にあります。英語学習も英語研修もその手段に過ぎないという「目的と手段」のポジションを今一度確認しておきましょう。ちなみに、自学に任せることの弊害としては、本業に必要な英語力の範疇を超えて必要以上に英語学習に時間をかけてしまうこと、テストスコア習得にリソースを向けすぎていつまでたったも実践デビューできないこと、必要に迫られない限り半永久的に英語学習が始まらない、などが考えられます。

2)英語教育施策には英語業務遂行者が参画しているか?

英語教育施策検討メンバーに、現場における英語業務遂行者を参画させることをお勧めします。一つ目の理由は、その人こそ、その現場でどのような英語力が必要とされているのか理解しているからです。二つ目の理由は、その人こそ、現場のスタッフたちの英語力のレベル感を知っており、彼らにとってどれぐらいの負荷やレベルであれば自学に誘導できるのかも推測できるからです。

3)英語教育施策者の自己満足に走っていないか?

以前、某メーカーの教育担当者から難度の高い研修依頼を受けたときの話です。英語という言語センスを徹底的に探求していく、ある意味、英語教育者としては挑戦したくなるような魅力的かつ挑戦的な研修内容でした。しかし私には次のような疑問が残りました。

「英語教育業者にとっては確かに魅力的なプログラムではあるが、実際にそこまで洗練された英語が求められるビジネス場面がその会社にあるのだろうか?仮にあるとしたら対象者は相当な英語上級者ということになるが、そもそもそういう英語上級者向けの研修ニーズはその会社に本当にあるのだろうか?」

失礼ながら、その企画リクエストは、英会話学校出身の教育担当者の自己満足にしか思えませんでした。ひとまず担当者の要望に応じて企画はしてみましたが、応募者ゼロで実施には至りませんでした…

4)その施策は持続可能か?

一時期、即効性のある研修が流行りました。その代表格がTOEICスコアアップ研修。ショックだったのは、その一年後多くの社員のスコアが下がっていたこと。会社上部を納得させるために、一定期間ははっぱをかけて平均スコアアップ率を可能な限り上げておく。しかし研修後一切フォローがなければ、スコアは下降する一方。こういう付け焼刃的な教育はもうすっかり前時代の遺産となりました。実際に「この一年以内に絶対英語力アップしないと困る」という社員に私自身出会ったことはありません。教育は時間をかけないと何も身に付かないのは、子供の教育も成人の教育も全く同じだと思います。時短を始め何でもスピードアップの時代だからこそ、教育にはサステナブルという発想がかえって生きるのだと思います。

5)貴重なるクロスファンクショナルチャンスを見逃してはいないか?

英語研修の見えない効果として、組織の風通しがよくなることが挙げられます。というのも英語研修には部門単位で行われるものと、各部門合同で行われるものがあり、後者は同じ会社のそれぞれの部門の職務内容や現状などをお互いに知り合う場にもなるからです。いわゆるクロスファンクショナルチームの英語研修版ですね。CFT(Cross Functional Team)は、全社的課題に対して、部署や役職を問わず人材が結集するチームのことです。私が以前英語研修を行っていた企業でもCFTは非常に盛んでした。異なる専門知識を持った従業員が、集中的に課題解決に取り組むため、生産性も高くなり、従業員同士のスキルアップという相乗効果も期待できます。各部門から送り込まれた人材が結集する英語研修においても、各部門の英語課題を共有しあったり、全社的な英語力底上げについても活発な議論が期待できます。実際、英語研修がきっかけで、社内各方面で自主的な学習サークルが立ち上がっているという話を研修後日談として企業から聞いたこともあります。

6)「英語学習はコスパがあまり高くない」というイメージが蔓延していないか?

社員が英語学習に重い腰を上げない要因のひとつとして、「英語学習はコスパがあまり高くない」という認識があります。たとえばTOEIC高得点を目指すためには膨大な学習時間が必要。しかし、仮にその得点を取ったとしても、実際にその英語力を活かせる場面は社内ではあまり見込めない。こうしたイメージですね。こうした英語低コスパ論を打ち破るためには、まずは苦労して習得した英語力が活かせる場面を具体的に提示することや、本業で実際に遭遇する場面に則した英文展開のレッスンを行うなど、教育施策側にも相応の工夫が求められます特に本業にコミットしている社員であればあるほど、英語力がどのように本業力につながるか具体的なイメージを持たせるほど、学習モチベーションは上がります。

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7)各部門の細かなニーズとかけ離れた「一般論としての英語力」に終始していないか?

多忙な社員たちは、自分の業務力向上につながる学習を惜しまない一方で、それらに結び付かないことにはなかなか関心が向かいません。英語もそのひとつです。多くの社員が英語研修にあまり強い関心を示さないのも、ここでいう英語がほとんどの場合TOEICや一般的なビジネス英語という想定であって、決して各自の現場の実情に即したものでないことも要因として考えられます。つまり、生産現場にも、技術部門にも、品質管理部門にも、営業部門にも、マーケティング部門にも、財務部門にも、IT部門にも、それぞれの業務に応じた英語ニーズがあります。TOEIC対策研修や英語プレゼン研修というようにひとくくりにされた既成の研修には、社員達の細々した現場ニーズに特化するイメージがありません。現場ならではの課題と連携させるような配慮があってはじめて、TOEICやプレゼン研修などの一般的なビジネス英語研修を受ける意義を社員も感じることができます。

8)先輩社員の暗黙知を見過ごしてはいないか?

外部英語研修業者は、英語学習法を論じることはできても、その会社にとってなぜ英語が必要なのか?また、どのような形で英語が業務上使われているのか?といった各社の英語事情については語れません。しかし多くの社員の心が英語に向かうかどうかは、むしろ自分たちの会社における英語事情に関する情報にかかっています。これを語れるのは自社の先輩社員たちです。すでに現場で様々な英語業務をこなし、また、そのために日々英語学修を行っている先輩社員たちにもっと注目しましょう。そして彼らの属人的体験として眠っている暗黙知を、後輩社員たちに伝えることで形式知として社内財産として生かしていきましょう。英語研修の前段として、ぜひこうした社員の英語学習マインドを刺激す仕掛けを工夫してみましょう。

9)英語研修が「とりあえずの新人持ち回り業務」になっていなか?

大手企業でよく見られるのが、新入社員に英語研修担当役を任せる風景です。もちろんジョブローテーションの一環として体験させること自体には十分な意義はあるのですが、社内事情がまだわからないため、個人的な趣向や価値判断で業者選定をしたり、研修設計をしてしまうなど、「独善的」になってしまうリスクがあります。そもそも英語研修とは、英語力を必要とする各部門の事情の上に成立するものであって、「まず英語研修ありき」ではありません。各部門長の所見を取りまとめたり、部門別アンケートを実施するなど、可能な限り社内の実情を見渡せる情報収集に努めましょう。

10)様々な定説を鵜呑みにしていないか?

「話せるようになりたければ音読せよ」

「リスニング鍛錬にはシャドーイングがお勧め」

「1万時間の法則」~大きな成功を収めるにな1万時間もの練習が必要 by マルコム・グラッドウェル「天才!成功する人々の法則」(講談社)

等々、世の中には様々なアドバイスがあります。しかしながら、どんな学習法であれ、学習者当人にマッチしたもの、現実的に実行可能なものでなければ意味がありません。まずは所属部門によって求められる英語力の中身が違うことを社内共有認識化し、その上で、学習者のレベルや性格によって学習メニューもある程度個別にカスタマイズしていく必要があります。もちろん組織である以上、「新卒は必ず●年●月までに全員TOEIC●点取得すること」という大まかなゴール設定をすることは致し方ないにしても、そこに到達するための道筋は、もう少しレベル別・所属部門別・専門領域別に道筋は示してあげる必要はあると思います。

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11) 出口戦略はあるか?

英語教育施策の出口についての考え方は色々あります。一例としては、もはや英語教育施策が不要なほど、各社員・各部署で独自の自学戦略が定着し、英語を補助的に使いながら国内外の情報に触れ、国内外の頭脳と議論し、本業領域の切磋琢磨にリソースを集中できる状態があります。具体的にはTOEICスコアで一定レベルをクリアしたら出口としてもよいでしょう。その際、その出口となるスコアにおいて、柔軟な設定をしておくことで、社員は必要以上に英語学習にリソースを取られず、本業に専念することができます。たとえば、「海外出張の要件=TOEIC700点」という狭いゴール設定にしてしまうと、「695点なので、今回の出張は諦めてください」という「本業<英語」という本末転倒の事態になる可能性もあります。「あくまでも努力目標で、実際の業務の状況によってはこの限りではない」という逃げ道はあった方がよいかもしれません。一方で、安定した英語力を身に着けてもらうために、「TOEIC700点を2回以上クリアすること」を出口としてもよいでしょう。これであれば、TOEIC研修にありがちな、たった一回の最大瞬間風速を絶対視する事態も回避できます。

12 ) Chat GPTで完全カスタマイズ→自社事・自分事でないと英語学習は続かない!?

ビジネス英語には、業界・職種問わず、普遍的に使える英語領域があり、まずはそこを土台ととして固めつつ、その土台の上に積み上げていく、各自の業界・職種に限定されるケースバイケースの英語領域がある。図にするとこんな感じです。

 

まずは普遍性の高いビジネス英語の中でも、「攻めの英語」の代表格はプレゼンテーションとネゴシエーションです。この二つを制覇すればビジネス英語はほぼ制覇したと言えるでしょう。以下の教材は、現場で遭遇する、ネイティブスピーカーの機関銃のような長文英語を想定し、かなり長文を織り交ぜてあります。長文を聞き取れることを目指しつつ、長文に込められた論理展開や様々な表現技法を学びましょう。

【英語でビジネスコミュニケーション実践編:プレゼンテーション・ネゴシエーション(ガイダンス動画)】

【英語でビジネスコミュニケーション実践編:プレゼンテーション・ネゴシエーション(詳細情報)】

 

一般のビジネス英語教材で一通り下地を固めたら、仕上げはChat GPTやGoogle Bardなどを使って、社員自身の職種や自社の現状に合わせた会話スキットを作り、英語学習に可能な限り「当事者意識」を織り込んでいきましょう。自社の業界に関連する動画・記事・関連図書などとChat GPTの合わせ技により、完全オリジナルの英語研修が作れます。また、Chat GPTに業界用語などを織り交ぜた会話スキットなどを作らせることもお勧めです。(以下のChat GPT関連情報は2023年6月時点のものです)

【Chat GPTを使ったDX領域に関する原書レッスン例】

【Chat GPTを使って、業界用語を使ったオリジナル会話スキットを作ろう】

4.企業英語研修講師の活動一覧

ラーナーズジムがこれまで携わらせていただいたクライアント一覧をご紹介いたします。職種としてはエンジニアなど技術・製造系が圧倒的に多く、次が営業と続きます。20年近く企業研修に携わらせていただき感じたのは、職種によって英語のとらえ方が違うことです。品質管理系はその日頃の業務姿勢が英語学習にも反映され、精度探求型の学習が好まれる傾向がある一方、営業系はオーラルコミュニケーション中心の動的が学習が好まれる傾向があります。エンジニア系は自分で立てた計画にそってコツコツと積み上げていくような学習が好まれるため、リスニングよりもリーディング、とりわけ文法系の学習でのモチベーションが高い傾向がみられます。このように学習者が置かれている職場環境によって英語学習方略も変わります。また敢えて細かに変えることで不要な労力を極力省き、かつ、本業力アップに直結した英語学習を進めていくことが可能となります。

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