TOEICと英検の違い~テスト対策以前の必須知識

TOEICと英検。どちらも英語学習者の間では、英語学習の大きな目標のひとつになっているようです。ただ私たちの時間は有限ですから、自分の英語学習の目的や目標に合わせて賢く選択したいものですね。どちらを選ぶにせよ、ひとたび学習を進めれば、膨大な時間がそこに注がれていくことになります。この記事に目を留めてくださった読者の皆さんは、いったん勉強やテスト対策の手を休め、そもそもTOEICと英検は何が違うのか?そして、自分のキャリアや人生目標と照合した際、どちらで攻めていったらよいのか、この記事を読みながら、じっくり考えてみましょう。

以下、両者の違いを見ていきましょう。

1.両テスト概観

大きな違いから見ていきましょう。一番大きな違いは、TOEICはスコア評価、英検は級での評価です。この違いにより受験の入り口でのテスト戦略が全く変わってきます。

【TOEIC受験がお勧めなケース】

そもそも自分のレベルがわかっていない方は、レベル別受験選別がなされていないTOEICがお勧めです。特に初級者にとっては、上級者が格闘する英語のイメージを、初級段階で知ることができるので、自分が将来遭遇する英語世界を早めに描くことができるため、これが学習モチベーションになる場合もあるでしょう。ただし、初級学習者にとっては、TOEICの問題の分量やスピードは「手ごたえある力試し」という領域を超え、かえってモチベーションを低下させてしまう可能性もあるので、初級学習者がTOEIC受験する際には、そういうショックもあらかじめ想定しておく必要があります。

【英検受験がお勧めなケース】

TOEICと違い、自分のレベルに合わせた難易度を選べるので、着実に階段を上がっていきたい場合には英検がお勧めです。特に易しい問題から徐々にレベルを上げていくことで、自信をもたせたい、英語習いたてのお子さんや、成人初級者の場合、学校の進学に合わせた級設定の英検がお勧めです。TOEICにはない「目標級の取得」というメリットを最大限に享受するためにも、問題集などを見て、合格見込みの高い級から挑戦して、まずは自分のレベルよりやや低めの級に合格した自信をバネに、高めの級に徐々に近づいていくことをお勧めします。

4技能の扱い方もTOEICと英検では違います。一般的にTOEICと呼ばれているものは、正式にはTOEIC LRを指しており、スピーキングとライティングは別途受験が必要です。一方英検の方は一次試験でLRWに合格した人だけが二次試験のスピーキングを受験することが可能です。

 

2.多様化する受験形式

受験者の多様な実情に対応するために、TOEICも英検も、様々な受験形式を展開しています。

【TOEICにおける多様な受験形式】

 ・TOEIC® Listening & Reading Test:一般的にTOEICと呼ばれているリスニングとリーディングで構成された2時間のマークシート方式のテストです。
 
TOEIC® Speaking & Writing Tests:一般的にTOEIC SWと呼ばれているスピーキングとライティングで構成された約80分間のテストです。パソコンとヘッドセットを使用します。
 
TOEIC® Speaking Test:スピーキングのみの約20分間のテストです。パソコンとヘッドセットを使用します。
 

【英検における多様な受験形式】

・英検:一次試験でリーディング・リスニング・ライティング技能を測り、通過した方のみ二次の面接式スピーキングテストを行う受験形式で、紙の問題冊子、解答用紙を使用します。一次試験と二次試験は別の日に行われます。

・英検S-CBT:従来の英検に対して、英検SーCBTとは、従来型の英検と同じ出題形式を取りつつ、1日で4技能を測ることができる受験形式で、原則毎週土日(エリアによっては平日も)実施中です。ただし、CBT( Computer Based Testing(コンピュータ ベースド テスティング)というコンピュータを使った試験方式であるため、 PCの基本的な操作(マウスクリック等)ができることが必要です。

・英検S-Interview: 英検S-CBT方式の受験が難しい方のための方式で、リーディング、ライティング、リスニングをPBT(紙ベースのテスト)、スピーキングを対面式で行う英検S-Interview での受験機会を提供します。なお、英検S-Interview は、合理的配慮が必要な障がい等のある受験者のみが対象ですので、対象とならない方は受験ができません。

・英検IBS:団体受験限定で、4技能を選択できる受験形式で、RL, WS, RLWSがあります。団体受験を想定しているため一人当たりの受験料金も割安になっています。

 

なお、TOEICにはTOEIC Bridge® 、英検には英検Jr.など、他にもバリエーションがありますが、一般成人学習者であれば、上記を知っておけば十分かと思います
 

3.レベル設定の比較(初中級)

次に初中級レベルでTOEICと英検を比較してみましょう。
TOEICではビジネス寄りコンテンツへの対応力、英検では多様な話題への対応力が問われている点は上級と同じです。ただ、初中級は上級と違って、実力変化が著しい傾向、つまり成長カーブが上級者よりも急である可能性があるため、ここは自分の学習特性に合わせて両者をうまく使い分けることが肝要です。

【TOEIC受験のメリット】

400点から600点あたりまでは、上級学習者に比べると、努力の量が割と早い時期にスコアに反映されていきます。一方、まだ様々な英語テスト向けに多様な学習をする余裕がないステージでもありますので、たとえばこのステージにいる間はTOEIC一本に絞って、スコアの変化をじっくり観察していくのもよいでしょう。また、英検は合否が決まるため、不合格の状態で成長を感じることは難しいのですが、スコア式のTOEICであれば、400→410や450→445なら現状維持、400→480なら確実に実力アップ、というように細やかに成長変化を確認することができます。不合格の精神的ダメージを受けやすい方もTOEICがお勧めです。

【英検受験のメリット】

TOEICは全レベルが同じテストを受けるため、初中級者が感じる負担感は上級者のそれよりはかなり大きいものです。これにより余計な無力感を感じてしまうことが懸念される場合には、英検で、準2級→2級→準1級と、小刻みに成長の階段を上っていくのがお勧めです。また、TOEICは完全ビジネス寄りコンテンツであるため、ビジネス英語独特の大量高速情報処理モードに不慣れな人は、一時的にTOEICに拒絶反応を示す場合があります。その点、学校英語の延長線上にある英検は、慣れ親しんだ学校時代の英語学習を思い出しながら、取り組むことができるのでお勧めです。

4.レベル設定の比較(上級)

多くの受験者が最終ゴールとして設定しているのは、TOEICであれば900点台、英検であれば英検準1級もしくは1級あたりかと思われますので、まずはこのレベルを見ていきましょう。
 

【TOEICの上級レベルイメージ】

900点台は非ネイティブスピーカー(英語を母国語としない英語話者)の最終ゴールと設定されているのがわかります。会話としては、自己体験の範囲内で、専門外の話題に対応できるレベルを想定しています。この表記から推察されるのは、専門領域で戦うビジネスパーソンや研究者はこのあたりが最終ゴールであり、TOEIC900点台の語彙力は専門領域外の一般語彙レベルをほぼカバーしていると考えられます。ここから先は、TOEIC SWテストで発信スキルを磨いたり、本業での実践に移行し、テストで英語力を測定するステージは卒業してもよいでしょう。少なくとも企業のほとんどが自社社員にこれ以上英語テストに傾倒することは期待していないことはしっかり認識しておきましょう。
 
また、スコアを追いかけすぎてしまうと、795点と800点との印象の違いに意識が向かい、さらなるテスト勉強に走ってしまう可能性がありますが、ビジネスの現場では、このあたりは誤差ととらえられるので、なるべく実践にマインドをシフトしていくことをお勧めします。逆に言うと、「795点は800点に5点足りないため、あなたに海外出張は認められません」という判断をする企業があるとしたら、それはかなりTOEICを硬直的に運用しているケースですから、場合によっては実践力を背景に海外出張希望を申し出るのも一案ですね。実際、システム上基準未達でも海外出張にはどんどん行ってもらい、あと付けで社員にスコア達成を目指してもらうようなケースも現場ではよくあります。
 

【英検の上級レベルイメージ】

スピーチやエッセイが課せられていることから、会話の流暢さという要素が重視されているのが英検上級レベルの特徴です。また実際の問題は、ビジネスに限らず、芸術、文化、歴史、科学、自然など多岐にわたっているのが、ビジネス寄りのTOEICとの大きな違いです。たとえば、社員にTOEIC900点&英検準1級所持者がいるとしたら、会社側はこの社員を「現地での会話を十分に聞き取ることができて、かつ自分からもある程度話すこともできる」、「ビジネスコンテンツはほぼ受信可能だが、さらに雑談用の多様な文化的・社会的会話もできる」というような評価をすることでしょう。
 
ただ、現状ではほとんどの企業が社員の英語力評価にはTOEICを採用しているので、英検保持者の場合、自ら英検で培ったスキル、とりわけTOEICでは不足気味の部分を自己PRしておくことをお勧めします。たとえばこんな感じです。
 
「私はTOEIC900点と、英検準1級を持っております。TOEIC900点からわかるのは、ビジネス場面での会話はだいたい聞き取れ、ビジネス文書のやり取りも特に問題がないことです。一方英検準1級からわかるのは、ビジネス場面に特化したTOEICと違い、雑談時に欠かせない、文化、芸術、科学などの多方面での話題対応力です。

5.結局、どちらを選べばよいのか?

学習者のタイプや目的によってお勧めするテストは違います。以下を参考にしてください。

【学校英語、また学校時代の英語の学び方を続けたい方】

英検がお勧めです。就活やビジネス用途であっても、英検準1級前後であれば、それなりに認めてもらえます。

【現在または将来仕事で英語が必要になる方】

大量の英文書の処理、会議での対応力などから、TOEICで英文・英語音声の大量高速情報処理力を鍛えておくことをお勧めします。また、これはひとつの傾向としてぜひ押さえておいていただきたいのですが、一般企業に就職される場合、企業のほとんどが英検よりTOEICスコアを重視していることは知っておきましょう。

【教養の英語を身に着けたい方】

ビジネス以外の様々な文化的・科学的話題を取り扱う英検がお勧めです。

【将来海外留学を検討中の方】

たとえば留学向け試験であるTOEFLやIELTSなどの受験を検討されている方であれば、両者の前哨戦としてTOEICで高得点を取得しておくとよいでしょう。平たく言えば、TOEICをさらに難しくしたものがTOEFLやIELTSと言えます。もちろんこれと並行して英検向けの学習をしてもよいのですが、TOEFLやIELTSという具体的な目標がある場合には、TOEIC→TOEFL、英検→IELTSのように、そちらの学習に特化した方が合理的ですね。留学を目指す場合、タイムリミットも考慮しなければならないので、時間がなければ、TOEICや英検というワンクッションは割愛して、最初からTOEFLやIELTSの学習に入らなければならない場合もあるでしょう。

6.学校とビジネス社会では目指す英語が違う

 比較というと、とかく優劣の話になりがちですが、TOEICと英検は優劣を競う対象にはなりえません。なぜならば、TOEICが生まれたビジネス界と、英検が生まれた学校教育では、目指すところが違うからです。
 
受験英語や学校英語の問題点ばかりがヒステリックに叫ばれた時代はもう終わりました。大学受験の英語に4技能を反映させる話もかなりトーンダウンしました。英語の問題は社会制度以前に、私たち学習者の選択やマインドシフトの問題であること。この認識さえあれば、大学受験の英語が今後どのような形を取ろうが、巷の英検熱やTOEIC熱に与することなく、自分自身の英語戦略で英語学習を進めていけるようになります。
 
ではその目指すところの違いを見ていきましょう。
 

【学校が目指す英語】

生徒たちの進路は様々ですから、学校教育の段階で、ビジネス英語、サイエンス英語、文学英語と領域を限定することはできません。また、実際ビジネスで使われる英文法はかなり限定的なのですが、その点においても、多様な将来を想定し、英文法は網羅的に学びます。こうした学校英語に準拠しているのが英検です。したがって、小中高あたりまでは、「学校英語+英検」という組み合わせが一般的かと思われます。

【ビジネス界が目指す英語】

目前のメールや文書を素早く処理すること。目前の会議で内容を聞き取って、適切に発言を交わすこと。また一連の英語処理が数時間、半日、終日、数週間続いても耐えられる、情報処理体力が求められます。また、ビジネスで使われる語彙や文法は学校英語と違いかなり限定されていますし、「受動態を使う以前に能動態で考える」「付加疑問文は全てright?で代用」「関係代名詞は日常会話では無理に使わない」など、コミュニケーションのスピードを担保するために、かなり英語は限定的・簡易的になる傾向があります。大量高速情報処理力、英語の持久力鍛錬を特徴としたTOEICが企業で重用される背景には、こうしたビジネス英語の特徴とTOEICがマッチしているからだと言えます。
 

7. 社会が変われば求めらる英語も変わる

以上、TOEICと英検の違いについて見てきました。両者を知れば知るほど、どちらも魅力的で二者択一は難しく思えてきますね。人の働き方が多様性に向かっている昨今、多様化の波が英語の世界にもやってきつつあります。たとえば、昨今はネット動画などで英語に触れることは特別な意識や努力なくできてしまうことから、若手における英語に対する心理的ハードルが下がっているため、「将来のためにしっかり勉強する科目」というとらえ方から、もっと軽いとらえ方に意識がシフトしているように思えます。そのため「まず英語ありき」という大前提から崩れ始めてきています。
 
また電子書籍であれネットの記事であれ、知らない単語箇所はネット上で即チェックできてしまうことから、語彙力においても、一定レベル以上の装備に躍起になる必要性も薄まってきました。実際、本コラム執筆者の私自身も、語彙学習を一生懸命やったのは大学受験までで、あとは実践で出会う度にチェックしつつ、自然に増やしてきました。
 
激動の時代に最も重視されるのは、学歴やTOEIC英検などの固定された資格よりも、目まぐるしく変わる現状に対応できる機動性、コミュニケーションセンスの方かもしれません。テストを通して英語力を鍛える戦略自体は間違っていませんが、従来よりも柔軟な運用にシフトしていくのも、これからの英語戦略のひとつの形だと言えるでしょう。平たく言えば、「準1級で英検はもう卒業。あとは実務で鍛える」とか「895点であともう少しで900点だけど、見切り発車で海外要員に応募してみよう」というような英語に対する鷹揚さがキャリア成功要因になる時代になってきたと言えます。
 

8. どちらを受けるにせよ語彙力あっての受験

以上実践的目線でTOEICと英検を比較してきました。どちらを受験するにせよ、やはり語彙力あってのテストです。手始めに、こちらで英単語学習から始めてみましょう。
 
●TOEICや英検の中級レベルはこちらの動画で。
●英検上級・TOEFLなど上級語彙はこちらの動画で。