英語「嫌い」を解剖する~グローバル人材育成(語学)のヒント

私が「英語嫌い」を主軸に置いて企業英語研修を展開してきた理由。それは、英語が嫌いということは、他に得意なことや好きなことがあることと背中合わせであり、私はむしろ各自の関心領域や専門領域の方に関心があり、そこ起点とした英語学習を広めたいからです。また、好きなことをがんばったり、得意なことを伸ばすことよりも、嫌いなこととの折り合いの付け方こそ、第三者である英語講師がお手伝いできることが多々あると思うからです。それくらい「英語嫌い」とは奥深く、探求するに値する領域だととらえています。今回の記事は、英語が嫌いな方だけでなく、英語が好きな方にとっても参考になる部分もあるかもしれません。ぜひ覗いてみてください。

 

 

 

1.「嫌い」の守備範囲は広い

今回のテーマは「英語嫌い」です。英語が大好きな方は読む必要がないと思いますが、英語以外の苦手なものと向き合う時、あるいは英語の中でも特定の苦手領域がある場合の参考としてお役に立てられれば幸いです

「嫌い」という感情には濃淡があります。拒絶反応に近いように、非常に濃い「嫌い」もあれば、「嫌いというわけじゃないが、どうしても他の事を優先してしまう…」という、微妙な「嫌い」もあります。英語の場合、実際に勉強しない限り、どれだけ「英語は嫌いではない」と言っても、嫌いな人と成果は変わりません。ですのでこの記事では、実際には英語に対して何らわだかまりがないけれど勉強するには至っていないケースも「嫌い」というカテゴリーに入れておきます。

こう考えてみますと、はっきりと「嫌い」と自覚しているケース以上に、「嫌いではないが、英語をやる気にまでは至らない」というケースの方が手ごわいように感じます。そもそも本当に大嫌いであれば、そもそも英語学習を扱うブログに行きつくはずもありませんからね。「嫌いではないけれど、モノにしたい」このあたりでグルグル回っている方が案外一番多いのかもしれません。

つまり、「嫌い」の観察を一歩深めてみると、それは「苦手」であったり「無関心」であったりと、「嫌い」ほど強くない感情があることがわかってきます。拒絶に近い「嫌い」なら、それは近づかない方がいいという信号かもしれません。心の安定を保つためには、「嫌い」なものからは距離を置いた方がいいでしょうし、その方向性がそもそも違うのですから、堂々と真逆の路線を進めばよいのです。一方「苦手」の場合は、その苦手な気持ちを受容してあげるか、敢えて挑戦するのかは自分の気持ちに素直に従っていけばよいでしょう。気が付くと「苦手ではあるけれど、一般の人よりは得意かもしれない」ぐらいに成長している可能性もあります。もちろん「苦手Aを補っているうちにBが非常に得意になった」という「瓢箪から駒」だってあるかもしれません。「無関心」はまだ好きなのか嫌いなのかすらわからない状態なので、ちょっとだけ覗いてみるのがいいかもしれません。「やっぱりこの領域は自分には向いてないな」と「受容」するのか、「挑戦」に入っていくのかは後の流れに任せていきましょう。

2.「嫌い」は「好き」を教えてくれる

本記事著者は自称「英語嫌い」と言われている方々と20年近く向き合ってきました。おかげさまで、「英語嫌い」は私の人生の一大テーマになっています。また、20年このテーマを扱ってきてもまだ、絶対的な正解には至っておらず、この問題の一種「奥行の深さ」を感じずにはいられません。

なぜ「嫌い」が深いかというと、「嫌い」には様々なメッセージがあり、とりわけ「嫌い」を見つめることは、その対極にある「好き」が浮き彫りになってくるからです。

実は「好き」とはっきり自覚できるものは案外限られていて、日々の生活や仕事の中に、「言われてみるとこういうのは好きかもなぁ」というものが潜んでいます。「嫌い」はそうした隠れた「好き」を抽出してくれる役割を持っています。たとえば、英語嫌いの要因の一つに「暗記嫌い」があります。筆者も相当な暗記嫌いで、大学受験以降一切暗記はやってません。一方、ゼロから何かを考えることはとても好きですし、メディアがこぞってAと騒ぎ立てると必ずそれを疑ったり、別の角度で考えることが大好きです。私は長年理系畑で英語を教えてきたのですが、暗記が嫌いな代わりに、じっくりと分析するタイプが多かったです。TOEICが理系人材向けではないと感じるのは、高速大量情報処理力を試すTOEICに対して、理系人材の「じっくり考える」傾向がマッチしないからです「justとonlyなんて気にしないで読み飛ばせ」がTOEICの世界、「justとonly、形が違う以上、そこに意味的な違いがあるはずだ」と掘り下げていくのが理系人材、というイメージですね。

こちらのリストのように、嫌いなことをリストアップして、そこから逆に好きなことを想い起してみるのも一計です。英語学習の定番である「音読」に抵抗がある場合でも、黙って読み進めていく「黙読」や動画の視聴であれば楽しめる方も多いです。机に向かって知識を入れる「座学」が苦手な方は、実際に人の中に入って英語を話すことの方に楽しさを感じたり、SNS等での発信ならがんばれたりもします。

「嫌いだからやらない、寄せ付けない」はとても正常な心の働きだと思います。だからこそこの「嫌い」を「食わず嫌いはよくない」などと頭ごなしに否定したり、無理やりポジティブシンキングや積極志向で押し込めたりせず、丁寧に向き合ってあげましょう。「Aは嫌いだけど、代わりにBならかなりやれるんじゃないかなぁ」と「嫌い」が新しい提案をしてくれるかもしれません。

 

3. 英語嫌いの3つの壁:概観

「嫌い」の守備範囲が広い理由の一つとして、「嫌い」は極めて個人的なものであるため、それを一般化しようとすると、人の様々な事情を考慮しなければならないことが考えられます。「英語の先生が嫌いだったから」「学生時代に落ちこぼれたから」「大嫌いな人が英語ペラペラだったから」「親から英語の成績できつくしかられた」「英語力に対する親からのプレッシャー」「英語が全く話せず大恥をかいた経験」などなど、英語嫌いの背景はまさに十人十色です。本記事では、こうした「嫌い」の多様性に配慮しつつも、そこから普遍性の高いエッセンスを抜き出し、ソルーションを探っていきます。

ところで英語を代表的5大教科である英国数理社の文脈で考えてみると、英語がとりわけ「嫌い」を誘導しやすいことが見えてきます。以下、英語と他の教科との違いについて見ていきましょう。

そもそも国語、数学、理科、社会は、知識のインプットが中心で、「話す」と言う要素はあまりありません。仮に研究結果について発表するようなことがあっても、日本語なので内容はさておき、話すこと自体は大きなハードルではありません。その点、知識のインプットの先に話すことが期待されれているのは5教科中でも英語だけだと言えます。ここで「人前で話す」恥ずかしさ、「うまく話せない」恥ずかしさ、「声を出すことそのもの」への恥ずかしさ、つまり「恥の壁」が浮上します。「恥ずかしいし、うまく話せない。だから英語は嫌い」という図式ですね。

他にも英語だけ違うポイントがあります。国数理社は、日常生活や仕事で役立つことが比較的容易に想像できます。一方、英語については、生活で使うことはほとんどありませんし、英語力を必要としない仕事もたくさんあります。したがって、自ら英語を必要とする仕事や、外国人と積極的に交わるような生活でもしない限り、小・中・高と12年もかけて学ぶ合理的理由が見つかりにくいのです。つまり「合理性」の壁ですね。そもそも英語の必要性に迫られていないのであれば、英語嫌いを悩む必要はないはずでなのですが、それでも英語嫌いが問題となってしまうのは、外資系企業と合併吸収の可能性、国内需要頭打を背景とした海外展開比率の増大、過度に日本円の預金に集中した資産ポートフォリオへの不安など、仕事や生活における将来の不透明性が関係していると思われます。

最後のポイントは努力の継続性です。国数理社は大学受験で一旦終了します。一方英語だけは、大学入学後も、就職後も、ブラッシュアップしていくことが暗に求められています。つまり「努力の壁」が浮上します。

以上、「恥の壁」「合理性の壁」「努力の壁」について、他の学科と比較して概観してみました。次のセクションで、それぞれ具体的に見ていきましょう。

4.英語嫌いの3つの壁:恥の壁

考えられる要因

ある英会話サロンのメッセージにこのようなものがありました。

「他の人が話す英語を批判するのはやめましょう」

そうなんです、英会話学習者の一番の敵は、同じ日本人の英会話学習者なんです。「日本人が話す英語が気になる」という傾向はどこから来ているのでしょうか?下手な英語を聞けば、優越感に浸り、あるいは先述の英会話サロンのように批判したくなる。一方、上手な英語を聞けば、劣等感を持ったり、萎縮してしまう。個人差はあるものの、これが韓国語、中国語、アラビア語、それぞれの学習者間だったらおそらくもう少しフラットな気持ちでいられるのではないかと思います。英語以外の外国語の場合、そもそも日本で話せる人には滅多に会わないため、自分よりも話せる人がいれば、純粋に驚いたり、憧れたり、親近感を覚え、自分よりも話せない人がいても、英語ほど強い優越感はさほど持たないように思います。「特技はプログラミングです」「そうなんですね。私は全く分からないんですけど、難しそうですね」ぐらいの軽いノリに留まるだろうけど、「帰国子女です」「TOEIC940点です」には何か独特の反応が付きまとう。モヤモヤした劣等感や屈折した優越感、「TOEIC凄くても、あんなカタカナ英語じゃぁ…」みたいな批判などなど…

英語へのこうした複雑な思いは、おそらく学校での体験や、親の期待、メディアの持ち上げ、などが関係しているかもしれません。クラスメートの前で音読させられたときの苦い思い出、小さい頃から英会話塾に行かされ、頑張っても頑張っても「まだまだ」という親の期待の強さ。メディアに登場するハーフタレントやCMに登場する英語ネイティブは皆美男美女で、なんとなく英語話者を美化する傾向、などなど。

実は私自身、外資系時代には、日本人英語丸出しで堂々と英語を話していたのに、英語講師に転向した途端、英語を人前で話すことに抵抗を感じるようになりました。「英語講師が話す英語は絶対正しい」という生徒さんからのまなざしや、互いの英語レベルをけん制し合う生徒さんたちの競い合いにちょっと心がぐらついてしまったのです。しかしその後、TESOLへ進学し、意識を議論の内容に向けるようになると、日本人英語を駆使していた元ビジネスマン時代の自信を取り戻し、自分の不完全な英語を晒すことに抵抗はなくなりました

・ではどうすればよいか?

感情には「その感情は持つべきでない」と思うほどに頑なになる傾向があります。ですので、まずは恥ずかしさを含め、英語にまつわる様々な感情をまずは一旦そのまま受け取り、観察してみましょう。「そうなんだ、恥ずかしいんだ。どういう理由でそう感じるのかな?」という具合に自分で自分と対話するイメージですね。その際、「こうすればいいんじゃない?」と解決を急がないようにしましょう。感情が求めているのはソルーションではなく、受容や共感です。まずは恥ずかしいという感情をそのまま受け取る。感情と対話する際にも「そういう状況なら恥ずかしいと思うのも当然だよね」のように受け止めてあげる。受け止めてもらえたその事実ひとつで、感情はかなり癒され落ち着くことも多いので。

恥ずかしがっている自分、劣等感や優越感を抱いてしまう自分をそのまま受け止めるだけでも、この壁はかなりクリアされるとは思いますが、もう一歩踏み込んでみようと思います。

一つ目として、恥ずかさ、劣等感など英語にまつわる感情は、成長の種であることを認識しておきましょう。そもそもアラビア語がペラペラな人を見ても心が揺らがないのは、その領域での成長を自分が何も望んでいないからです。だから純粋な賞賛、憧れで留まっている。そこから「それに比べて、自分は全く話せない…」というような劣等感に発展しないのです。

次に「試し音読」で自分の声の質感を観察し、調整してみること。話す英語が通じるかどうかは、英語表現とは違う次元で、声の大きさや滑舌にも左右されます。また英会話はあくまでも目前の人との共同作業なので、話すスピードも重要です。ネイティブスピーカーに合わせて早口でしゃべろうとすれば、何か焦っているような感じになるでしょうし、かといってあまりにもゆっくり話せば、相手によってはちょっとイラつかせてしまうかもしれません。したがって、「自分にとって心地よい声の大きさ、スピード」と「相手にとって許容範囲と思われる声の小ささと、ゆっくりさ」を自分なりに想像しながら音読してみましょう。このように自分自身で声のトーンを調整できるようになると、実地に出たときにも余裕が生まれます。なぜなら「自分で自分を意識的に調整する」ことから余裕は生まれるからです。「がんばってる自分を傍らで応援しているもう一人の自分」がいるイメージですね。

こちらの動画は、中級以上を想定していますが、レベルを問わず音読のあり方の参考にはなると思います。

なおあくまでも「試し音読」としておくと、観察や調整に意識を向けやすくなります。英文を覚えることや、上手にしゃべることを目的とする「本格音読」にしてしまうと、つい身構えてしまい、よほど好きな英文でもない限り気持ちが続かないので

三つ目は、敢えて日本人英語やお国訛りの強い英語を聞いて、ネイティブスピーカーの英語に向かいがちな気持ちをコンテンツ寄りに仕向けていくことです。こちらの孫正義氏の英語を聞いていただければ、気にすべきは流暢さではなく、話す中身の方であることをきっと実感するはずです。とはいえ、思ったことがスラスラ英語化できる氏も英語上級話者であることには違いありません。初級学習者であれば「中学英語を使って、シンプルな英文や質問ができるようになろう」、中級学習者であれば「今は相手の話がわかることを一番のゴールに設定してTOEICに集中する」というような、今の自分にもできそうなあたりから始めてみましょう。

5.英語嫌い3つの壁:合理性の壁

・考えられる要因

「日本で生きていくのに英語は要らない」これが私たちから英語を遠ざけている一番の要因かもしれません。必要性の低いものをがんばるためには「好き」というエネルギーが必要なので。つまり英語を学ぶ合理的理由がなかなか見つからない「合理性の壁」が私たちの前にはだかっていると言えます。先述の5教科の中での比較においても、英語の場合、生活で使うことはほとんどないのに加え、職種・業種によっては生涯関わらない可能性もあります。つまり自分からわざわざ飛び込んでいかない限り、英語の必要性に迫られることはあまり考えられないということですね。

必要性を感じないから頑張る気持ちが起きない人からすると、英語を頑張っている人のモチベーションが気になります。これも個人差はありますが、ざっくりと以下の3つが考えられます。

英語が好きであることや必要性が学ぶモチベーションになることは当然として、着目していただきたいのが「リスク不安」です。何かを学ぶ真剣さは、時にリスク不安をはじめとするネガティブなものが起因していることも多いのです。この図には入れませんでしたが、例えば「大嫌いなあいつにだけは負けたくない」だとか「こっそり英語を練習していつか見返してやる」というようなドロドロしたものでも構いません。先述したように、沸き起こる感情は否定されるほど頑なになります。たとえ不純に見える動機でも、それが今の自分の偽らざる感情であれば、それを受容し、もしそれが学習のモチベーションになるのであれば、それにしばらく身を任せてみましょう。

・ではどうすればいいか?

さて、英語嫌いの場合、どれだけ「英語ができないことのリスク」に意識が向かうかが肝なのですが、「確かに、これらのリスクは十分想像できる。しかしだからと言って今から相当な努力をかけて英語を学ぼうという気持ちにはなれない」という気持ちに留まる可能性もあります。実は上記図表のリスクについては、自らが英語運用者である以上に、「英語に堪能な人や、海外事情通や、先見性の高い企業などの”自分以外のリソース”への目利き」という視点が肝です。以下見ていきましょう。

外資系企業との合併吸収によるリストラへの不安:これは「外国人上司のもとに配属になっても支障ない英語力」あたりを目指し、あとは本業スキルの向上に専念していくのが王道でしょう。

国内市場低迷への不安:これは英語力云々というより、適切な海外展開や業務展開を行っている企業に日頃アンテナを張っていれば解消されます。ただ転職を考えている場合、そうした企業は社員にも一定のグローバル指向性を期待しますから、そこをモチベーションに英語を学んでいきましょう

【関連記事】企業で求められる英語のレベル

アンバランスな資産ポートフォリオ:資産運用界隈では、日本人の資産が諸外国と比べると、圧倒的に自国通貨の預貯金に集中していることがリスクの一つとして指摘されています。だからといって、今から英語力を鍛錬して海外に口座を持つというのは飛躍しすぎ。英語力というよりも、海外に精通した人、英語で世界に食い込んでいる人たちのアドバイスや知見に触れることで、こうした不安は解消されていきます。

他にもリスクは色々あると思いますが、要するに「英語上級者を目指すのではなく、多少なりとも英語を学ぶことで、英語を使って海外事情に精通している人たち、あるいはそういう企業を見つけるセンサーを磨いておこう」ということです。これであれば、英語学習のハードルはかなり低くなり、結果として、英語嫌いも解消されていくことでしょう。英語を学ぶ合理性が見つからない場合には、英語に疎いことが海外事情に疎いことにつながり、そしてそれは最終的に情報弱者状態に発展するというリスクをイメージしてみることも一計です。もちろんその逆に、海外事情に精通している人や、先見の明のある人や企業に着目することで、自分自身の英語力不足をカバーしていくという発想も英語嫌いという感情を弱めてくれることでしょう。

これからお話することに科学的根拠はありませんので、あくまでも私個人の根拠なき「勘」のようなものとお考え下さい。

「類は友を呼ぶ」「引き寄せの法則」など色々な呼ばれ方がありますが、何かに対して閉じている心は閉じたものを呼び寄せ、開いている心は開かれたものを呼び寄せることがこの世の中では結構あるように思います。つまり、英語に対して心を完全に閉ざすということは、同様に国内の現状だけで未来を推測するような知見を呼び寄せる。一方、英語に対してオープンな心は、英語力を駆使して全方位的に収集・分析した知見を呼び寄せる、ということです。投資界隈でも脱炭素界隈でも日本は世界に対して一周も二周も遅れていると言われています。そういう見方をされている方の経歴を拝見しますと、彼らの共通点は英語ならびに世界情勢に対する障壁の低さにあるように感じます。自分自身の英語力習得問題はさておき、「英語に対して熱心ではないが拒絶もしない」というスタンスを持つだけでも、入ってくる情報の質は格段に上がるように思います。

 

6.英語嫌い3つの壁:努力の壁

・考えられる要因

「心の取り扱い方で恥ずかしさは緩和されていくことはわかった。英語の必要性がないという問題については、見えないリスク(機会損失や弊害)に想像を拡大していくことで解消されていくこともわかった。しかし、その先に待っているのは努力の壁。結局、努力しなければ、英語はモノにできない事実は変わらないのではないか‥‥」

そんな風に思われた方もいらっしゃることでしょう。最後に努力の壁について見ていきましょう。

ポジティブメッセージのひとつに「悩む暇があったら、今単語ひとつでも勉強しよう!」というものがあります。

確かに、ひとつぐらいなら覚えられるかもしれません。しかし、元々英語が好きでない限り、そんなスローガンもおそらく三日と持たないでしょう…。結局、長い長い努力の道に気が遠くなってしまいます。

私自身、本当に好きかどうかは「時間の経過」でわかります。やらずにはいられないものをしているとあっという間に時間が過ぎていきますし、ご飯を食べる時間すら惜しんだりします。トイレもついつい我慢してしまいます。一方、「いい加減やらないとヤバいよね」という動機でやっているものは、そもそもなかなかそこに身体が向かわないし、仮にがんばってはじめても、頻繁に休憩をとったり、ひどい時は、気が付くと別のことをやっていたりします。大人になってある程度理性でコントロールはできるものの、それほど好きでもない事に努力を注ぐというのはやはり大変なハードルなのだとつくづく思います。

・ではどうすればいいか?

ズバリこの図が答えです。

20年英語嫌いの方々と向き合ってきて、それなりの小技(だましだまし勉強モードへ誘導する作戦)は色々と身に付けました。しかし人間の本質を考えると、やはり「好き」にはかなわないという結論にいつもたどりつきます。だからこそ、この「好き」に徹底的にこだわってみるのです。

好きなものを探す時のポイントです。

❶目安は食欲・排泄欲跳ねのけてもやりたいかどうか?:なんだかダイエットにも通じそうですね。食欲や排泄欲を凌駕するくらい夢中になるものは、それ自体もやはりほぼ生理的欲求に近い、つまり魂レベルでやりたがっていることだと思います。「これできたって、英語には何の足しにもならない」「こればっかりやってもなんもメリットない」という「必要性」や「利便性」というスクリーニングは一旦解除しておきましょう。

❷無理に英語につなげなくていい:好きなものを探す時は、英語縛りを一旦解除しましょう。英語縛りがあると、「それほど好きではないけど、英語がとっつきやすそうだから…」とか「めちゃくちゃやりたいけど、英語レベル高すぎるから…」と、英語基準でそれほど好きでないものをやったり、逆に大好きなものをあきらめたりすることになり、結局、中途挫折の原因となります。英語習得のことは一旦忘れ、好きなものの探求に集中しましょう。

❸飽きることを恐れない:好奇心は元来気まぐれです。途中で飽きたとしても、気にせずに、次なる好きなものを探しましょう。「一度始めたら最後までやり遂げる」は、子供にはある程度必要なスキルかもしれませんが、すでにお仕事で勤勉性を発揮している大人は英語ぐらい100%わがままでいきましょう。

具体的なコンテンツは次の項で扱いますので、ぜひ参考にしてください。

 

7.「好き」から始めるためのお勧めコンテンツ

一番重要で、人によっては一番難しい領域に入っていきましょう。それは、読者の皆さん自身の好きなものを探すということです。例えば恐竜好きな方であれば、こんな手順で英語の世界に入っていきます。

❶「恐竜 英語」で検索し、dinosaurという単語を拾う 

❷dinosaurで動画検索または通常検索 

❸自分の理解度に合わせ、日英字幕や字幕なしで英語動画を楽しんだり、記事を楽しむ 

❹英文記事を読むのが負担であれば自動翻訳を使う

この「恐竜」部分を各自好きなものに置き換えて、上記手順で動画や、記事を楽しんでいきましょう。

それでは、以下、私の独断と偏見で紹介していきます。

❶落語好きなら…シンプルな英語でこれだけ伝えられることに感動したりします。

❷洋楽好きなら…やはり英語の歌は英語のまま理解したいし、歌いたいですね。ちなみに「オネスティ」は私が中学時代に初めて聞いた洋楽です。英語のつづりと音声とのギャップをこの曲で知りました。もちろん曲自体は今でも大好きです。

❸スポーツ好きなら…大好きな競技の実況中継、そのままで楽しめたら最高でしょうね。歯車マークから字幕設定できるものから始めるとよいでしょう。英語字幕見ながらであればリスニングのストレスもだいぶ軽減されることでしょう。

❹映画好きなら…勉強したい単語を入力すると、その単語が登場する場面が登場する優れモノです!たとえば、「こんな単語一生使うことはないだろう」と思っていたpenultimate(最後から2番目の)が登場する場面を見て、この単語が急に身近に思えてきました。

❺数学・物理・化学など理系科目を英語で学ぶなら

❻世界史好きなら

❼英語でプログラミングを学ぶなら

❺から❼が該当する方々は世界一流の講義を無料で学べるKhan Academyにアクセスしてみましょう。自分が得意とする領域であれば、英語を飛び越えて内容理解の方が先行するような不思議な感覚を味わえます。英語嫌いの理系寄りの方々にお勧めです。以下にアクセスし、search箇所に、学びたい項目を英語で入力します。たとえば量子物理学であれば、「量子物理学 英語」で検索し、quantum physicsと調べてから、この英語を入力すると、一連の講義にアクセスできます。

https://www.khanacademy.org/

❾料理好きなら…言葉の理解以上に動きで理解できてしまう領域は英語嫌いの方にもハードルが低いかもしれませんね。

➓和装好きなら…日本の魅力を伝えたい方にお勧めです。

⓫聖書の世界なら…かなり微に入り細に入りの解説ですので、日本語版を見てから英語版を見たり、英語版を日本語字幕とセットで見るとストレスが小さくなるかもしれません。

⓬スピリチュアルを英語で学ぶなら…抽象度が高いので、おそらく日本語にしても腹落ちしにくい場合もあるかもしれません。くれぐれも英語学習のために我慢して視聴するのではなく、なんとなく落ち着く動画を感じることに徹してみましょう。英語の理解とは別次元で、自分が落ち着くタイプの声の動画を探してみるのもよいでしょう。

以上を参考にして、ご自身だけの「大好きコンテンツ」探してみてください。なお英語嫌いにとって一番とっつきやすいものとして動画サイトを紹介させていただきましたが、読書好きという方は、原書からのアプローチもあります。ただこちらは上級向けのアプローチだと思いますので、今回は割愛します。上級者の英語学習法はこちらも参考にしてください。

 

8.英語は無理に好きにならなくていい

以上、英語嫌いへの処方箋を探ってきました。最後にお伝えしておきたいのは、「英語は無理に好きにならなくていい」です。必要になったときに必要な分だけやればよいのです。今は必要でもないのに、将来を案じて、無理にやろうとしても結局長続きしません。ですから7の項目で紹介したように、まずは自分が好きなジャンルを見つけること。その上でそれに関連したサイトや動画を見つけることから始めてみましょう。

 

 

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